閉じ窓

空舟千帆

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 ふたつの焔が闇の中に舞っていた。ずっと見ていたいと願ったが、それが叶わないことを知ってもいた。

 喉の渇きと寝床の硬さが、彼を眠りから引きずり出した。夢の続きのような暗闇の底で、重くこわばった体を起こし、浅く喘ぐように息を吐いて、彼は先ほどまでの夢を思い出そうとしていた。

 長い年月を隔ててなお、光は脳裏に灼き付いて離れなかった。際限のない記憶の反芻の果てに、残照のような今日が続いた。汲み置いていた水だけを口にし、這い出るようにして住房を後にすると、彼はいつものように仕事場へと向かった。湿った土の臭いが充満する、歩き慣れた隧道トンネルを辿る間も、記憶を手繰ろうとする試みを止めはしなかった。

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