第8話 朝の食堂での邂逅
エドワードは食堂へたどり着くと、出入り口付近でウロウロと挙動不審なレイを見つけた。
「おやレイ君、おはようございます。 夕べはよく眠れましたか?」
とニッコリ微笑みかける、エドワードに気が付いたレイは子犬を連想させるようなパタパタとした動きでエドワードへと駆け寄ってきた。
「エドワードさんおはようございます! 昨日はお世話になりっぱなしで本当に感謝してます。」
と、礼儀正しくペコリと頭を下げる、キチンと食事をとりぐっすり休息をとれたことで、どうやら元気が出たようだ。
「いいんですよ、大したことはなにもしていません、それよりなにやらソワソワしてましたがどうしたんです?」
「あっ!? そうなんです、実はゆう……ゴトーさんに今日の予定を聞きに尋ねてみたら部屋からいなくなっていて……」
「ゴトーさんというとレイ君が昨日話していた護衛対象の方ですか?」
「はい……実は部屋にあった荷物も持ちだされているみたいなんです……僕置いていかれたんでしょうか……」
ションボリとするレイを見てちょっとだけ良心が痛んだが、エドワードは平然と
「おや、そうなのですか……お連れになっていた女性もいらっしゃらないんですか?」
と尋ねてみると、レイはマーゴの部屋に勇者がいる可能性を考えていたようで顔を赤くしつつ
「あ……さすがに、こんな早朝から女性の部屋を訪ねるのも良くないかなって、迷っちゃってまだ行ってないんです……」
と、答えた。
「なるほど、では先に朝食でもご一緒にいかがですか? 一人でする食事は味気ないものですからね」
「え……あの……僕」
「ああ、食事代のことは気にしなくてかまいませんよ。 貴方の分も宿の方に先に払ってありますからね」
とニコリを微笑んだ。
「そ、そうだったですか……では喜んでご一緒させてください。 僕がエドワードさんの分の食事も取りに行ってきますから席で待っていてくださいね!」
と元気に返事をするレイは食事を取りにカウンターへと急いで走っていった。
「アルド殿は本当に良い息子さんをお持ちだったのですね……」
その姿を見送りながらポツリとエドワードは呟いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
朝食を終え、そのまま他愛もない話をしていたエドワードとレイは、突然酒場兼食堂の入り口の扉が勢いよくバーーン! と音を立てて開いたのに驚いてそちらを見た。
すると、勢いよく開いた扉から重そうな鎧を着た男が入ってきて、眉間にしわを寄せ食堂にいた人達を見回しているのが見えた。
男を見たエドワードはため息をつき、鎧をきた男に向かってヒラヒラと手を振る
「ルイス、ここですよ」
それを見た鎧の男は眉間のしわを益々深くしながら唸るようにエドワードヘ話しかけた。
「エド……貴様ら良くも堂々と俺を置いていなくなったものだな……」
「仕方がないでしょう。 貴方は国防の要なのですよ? 気軽に連れ出せるわけがありません」
とピシャリと言い返すエドワード。
「ふざけるなっ! ならなぜお前たちは平然と出て行けたんだ」
と、ルイスは抗議するが、エドワードはピクリと眉を動かしながら
「そんなの長い年月をかけてきちんと後進を育てあげつつ、支障が出ないよう根回ししてたからに決まってるでしょう? 貴方は今までなにやってたんですか、『すべて自分一人で解決してては引退なんてできませんよ』って私は何度も言いましたよね?」
と不機嫌そうにルイスへと言葉を返す、ルイスはその言葉に少し動揺しながら
「し……仕方ないだろうっ! 皆が私でないと解決できないのでどうしても頼むって……いうから……」
と、目を泳がせる。
「はぁ……騎士団長として喜ぶべきなんじゃないですか? 人望ありすぎて引退させないために囲い込まれてる自覚がなかったようですけど」
と、エドワードは呆れながらルイスへ生暖かい視線を送った、そのやり取りを驚いたようにみていたレイがおずおずとエドワードへ話しかける。
「あ……あのエドワードさん?」
「ああ、紹介しましょうね。 この男はルイス、このフィルド王国の騎士団長ですよ」
レイは目を見開いて驚愕して立ち上がった。
「ええええっ!? あのルイス騎士団長様ですか! ……あ、あのっ……お、お初にお目にかかります、ぼ……私はショカンシタ王国騎士見習いのレイ・バーグと申します」
と、ペコリと頭を下げる。 それを聞いたルイスはピクリと眉を動かし
「レイ・バーグ? では君はアルド騎士団長の息子か……そうか、話には聞いていたが大きくなったな……」
とレイの頭をポンポンと軽く叩いた、ビックリして頭を上げたレイは顔を赤くしながら尋ねる。
「父をご存知なのですか?」
「ああ、勿論! 毎年行われている条約会議や同盟国の合同演習などでよく会い、たまに一緒に酒をのんだりしたものだよ……お父上の事は残念だった、だが王を守り命を落としたことは騎士の誉であり最高の死に方だ、君のことは心残りであったろうがな」
ルイスは遠い目をしながらルイを見ていた、レイは涙をボロボロとこぼしながら嗚咽をこらえていた。
「ところで君はなぜエドとこんな所に?」
レイ少年にハンカチをそっと手渡しながら、二人の会話を黙って聞いていたエドワードは
「実は、昨日偶然ここで出会いましてね、ショカンシタ王国やお父上のお話を伺ったりしていたのですよ」
「それは、随分とすごい偶然だな」
ルイスは訝し気に問いかける。
「アドルファスが首を突っ込んだんですよ……」
「…………ああ、そうか……」
それで色々と察したのか、ルイスが気の毒そうな顔でエドワードを見た。
「ルイス、少し貴方に話したいことがあります。 いつまでもそこに突っ立っていられると邪魔になるのでお座りなさい」
「ああ、分かった」
とルイスはどっかりと腰を下ろす。
それを見ながら、エドワードは優しい笑顔を浮かべてレイに話しかけた。
「レイ君、そろそろお連れの女性を訪ねて見られたらいかがですか? もし、女性もいらっしゃらないようでしたらお仲間の二人を私も一緒に探しますから」
それを聞いたレイは
「いえ、エドワードさんにはたくさんご迷惑をかけてるのにこれ以上は……」
と恐縮するがそれをみたルイスは
「なにをいっているんだ、エドは困っている者を見捨てるような薄情な男ではないぞ。 それに子供が困ったときは大人を頼るのはあたりまえだろう? 遠慮などしなくて良い」
と、キッパリ言う。
「あの……僕もうすぐ15才の成人を迎えますからそこまで子供では……」
「何を言っている、成人してないなら立派な子供だ、変に遠慮などせずいくらでも周りに甘えなさい」
とまたレイの頭をポンポンと軽く叩く、レイは居たたまれなくなり慌てて
「あ、ありがとうございますっ! ぼ……私はよ、用がありますのでこれでっ」
と、パタパタと客室のほうへ走っていった。
「まったく……これ以上信奉者を増やしてどうするんですか……」
「ん? そんな者はおらんぞ」
「ええそうでしょうとも……貴方の
とエドワードは昨日の出来事から簡潔に話し始めた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆◇
・レイ君は14才の少年です、お父さんの騎士団長が忙しい合間をぬって手塩にかけて教育してくれたおかげで、街道沿いにでる程度のそこまで強くない野生生物や魔物なら互角以上に戦えるので、チート力は持っていても戦闘が怖くて戦えなかった勇者を守って旅をしていました。
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