五行10 馬禍人禍    

司馬徳文しばとくぶん琅邪ろうや王になって間もなくの頃、

ヤバイ遊びをしていた。


門戸を締め切らせた囲いの中に馬を放ち、

配下に命じてこの馬に矢を射掛けさせた。

何本の矢が刺さったところで死ぬか、を

見ていたのだ。

恐らく、賭けの対象にしたんだろう。


それを聞いた側仕えたち、

慌てて司馬徳文を制止する。


「馬は司馬に通じます、

 これを射つということは、

 国のさだめに

 射掛けているようなものです!」


司馬徳文、それを聞いて

ゲームを取りやめこそしたものの、

このときにはもう十歩ばかりの矢が

馬に刺さっていた。


おそらく、これが原因となり、

間もなく桓玄かんげんに簒奪されたのだ。



桓玄が建康けんこうに攻め込む直前ころ、

梁州りょうしゅう、つまり後秦こうしんとの最前線で、

馬に角が生える、という現象が起きた。


梁州刺史りょうしゅうしし郭銓かくせんは、

大ボスの桓玄にこの馬を送った。


劉向りゅうきょうがその著書で説くところによれば、

馬に角が生えようとするのは、

まさに桓玄が挙兵しよう、

と企んでいたことの証明である。


郭銓は、馬に角が生えきる前に、

その馬を殺すべきだったのだ。

それをしなかったからこそ、

郭銓は最終的に滅ぼされた。


……あ、そうなんだ?



劉裕りゅうゆう五斗米道ごとべいどう軍を

あらかた倒したあたりのこと。


無錫むしゃくに住まう趙硃ちょうしゅという少年が、

八歲なのにもかかわらず、

ある朝 190 cm に伸びた。

ヒゲやモミアゲももしゃもしゃ、

しかし三日後に死んだ。



同じく、劉裕が権勢を伸ばしていた頃。

東陽とうように住まうこう、という人の家に

女の子が生まれたが、

育てられないと思ったか、

すぐさま地面に埋めてしまった。


だがその子は数日間、

地中からずっと泣き続けた。

やがて別の家のものに発見され、

生き延びるのだった。



劉裕がいよいよ禅譲の準備に入った頃、

豫章郡よしょうぐん吳平ごへい県に

不思議な人がいた。


おちんぽ、二本。

しかも左右にでなく、上下に。


はわわ、しゅごい。



安帝が殺され、恭帝が立ったときにも

謎おちんぽマンは現れた。


こちらは建安けんあんの人。

おちんぽの先っちょに亀さんがおらず、

平べったい。


しかも竿の形状は、女体っぽい。

はわわ、はわわわ――

いや、全く想像がつかないな?




晉恭帝之為琅邪王時,好奇戲,嘗閉一馬於門內,令人射之,欲觀幾箭而死。左右有諫者,曰:「馬,國姓也,而今射之,不祥甚矣。」於是乃止,而馬已被十許箭矣。此蓋射妖也。俄而桓玄篡位。晉安帝隆安四年十月,梁州有馬生角,刺史郭銓送示都督桓玄。案劉向說,馬不當生角,由玄不當舉兵向上也。睹災不悟,故至夷滅。晉安帝義熙七年,無錫人趙硃,年八歲,一旦暴長八尺,髭須蔚然,三日而死。義熙中,東陽人黃氏生女不養,埋之。數日於土中啼,取養遂活。義熙末,豫章吳平人有二陽道,重累生。晉恭帝元熙元年,建安人陽道無頭正平,本下作女人形體。


晉の恭帝の琅邪王に為りたる時、奇戲を好み、嘗て一なる馬を門內に閉じ、人をして之を射たしめ、幾箭にて死にたるかを觀んと欲す。左右に諫める者有り、曰く:「馬は國姓なり、而して今、之を射たば、不祥は甚しからん」と。是に於いて乃ち止めど、馬は已にして十許りの箭を被りたるなり。此れ蓋し射妖なり。俄にして桓玄は位を篡う。晉の安帝の隆安四年十月、梁州に馬に角の生えたる有り、刺史の郭銓は都督の桓玄に送りて示す。劉向が說を案ずるに、馬の當に角の生ぜざらば、由にて玄の當に兵を舉げ上に向いたらざらんなり。災の睹したるを悟らざれば、故に夷滅さるに至る。晉の安帝の義熙七年、無錫人の趙硃は年八歲にして一旦にして暴に八尺に長じ、髭須は蔚然とせど、三日して死す。義熙中、東陽人の黃氏は女を生みたれど養わず、之を埋める。數日、土中にて啼き、養を取りて遂には活く。義熙の末、豫章の吳平人に二なる陽道を有し、重累し生く。晉の恭帝の元熙元年、建安人の陽道に頭無くして正平なれば、本より下にて女人の形體を作したり。

(宋書34-2_術解)

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