登場人物紹介その1

・これまでのあらすじ


ローランド・ハリスは15年ほど前、列車事故に遭った。

生前も、亡霊となってからも苦痛に晒され、ローランドは「自分」を見失う。そんな彼にも、「兄弟」という道標が存在していた。

ある日、この世の理を覆すほどの情念と妄執に接触し、ローランドは自分と同じ「死者」だらけの空間に迷い込んでしまう。激しい怨念や悲嘆が渦巻く中で、壊れた心は更に追い詰められていく。

果たして彼が向かう先に、希望は存在するのだろうか……?




・登場人物紹介


ローランド・ハリス

事故に遭い、亡霊となった青年。いつもにこにこと笑っている反面、精神的にかなり追い詰められており、ほとんど正気を失っている。自我が崩壊しているため、容易に他の霊からの侵蝕を許してしまう状態。

普段は兄の白骨死体を依代よりしろとして借りている。本来の肉体も死亡したことにはなっているが……。

本名はアンドレア。生物学上は女性とされているが、母親の意向で男性として育てられた。



ロジャー・ハリス

ローランドの兄。生前は軍人だった。少し抜けており、調子のいい青年。尊大な口調で話すが、不安や苦しみを素直に吐露とろできない面もある。

肉体はとうに白骨化しており、妹(アンドレア)の霊を憑依させることでどうにかこの世に存在できている。

愛妻家で兄弟思いだが、友人のロナルドとは根深い因縁がある模様。



コルネリス・ディートリッヒ

亡霊の一人。「正義のため」と称し、ローランドの自我に(ほぼ無理やり)潜り込んだ。多くの記憶を失っており、あるメールを見かけた瞬間から、自分を「キース・サリンジャー」だと思い込むようになる。

生前は警官だった。正義感の強い性格ではあるが、独善的で思い込みが激しく、過去に大きなトラブルを起こしたようで……?



ロナルド・アンダーソン

ロジャーの旧友。男女問わず他者を性的に辱めることに悦びを覚える外道で、自分の欲望を満たすためには他者の犠牲すら厭わない。悪行の報いを受けて焼き殺された後も、欲望のために動いている。

ロジャーに対してはかなり拗らせた感情を抱いているが、死んだことを認められないあたり、それなりに友情は感じているらしい……?



カミーユ=クリスチャン・バルビエ

ローランドと同じく亡者だらけの空間に迷い込んだ青年。現代画家。

「他者からの殺害行為」を妄想して興奮する変態。共感でも興奮するので、死んでもなお人生(?)を謳歌している。とはいえ弟を遺して逝くのが不安、遺作に満足できていない……など、心残りを抱いてはいるらしい。



花野紗和

カミーユの生前より取り憑いている霊。小説家の女性。

非常にテンションが高く、自己主張が激しい。

好奇心旺盛であらゆることに興味を示すが、友人たちの性癖にはドン引きしがち。



ノエル・フランセル

紗和と同じく、カミーユの生前より取り憑いてる霊。こちらはデザイナーの男性(精神的には女性)。

カミーユと愉快な仲間達の中では常識人にも見えるが、生前は殺人鬼だった。



レヴィ=エルダー・アダムズ

両性具有の青年。生真面目で冷静沈着だが、少々短気な一面も。

激しい怨みを抱いており、自分でも制御ができずに苦悩している。

カミーユとは旧知の仲らしい。



ロデリック・アンダーソン

ロナルドの実弟。童話作家。臆病な性格で、過去のトラウマからなかなか立ち直れていない。

ローランドのことを実の兄以上に慕っており、未だに死を受け入れることができていない。



ロバート・ハリス

ロジャー、ローランドの実弟。

年齢にしてはかなり幼さが目立つ。

兄を相次いで亡くしたことがトラウマになっているようで、記憶に蓋をしている可能性が高い。



赤い髪の女

亡霊の一人。血に濡れたことで髪が真っ赤になっている。今の段階では本名は不詳。

他人の意識に侵蝕する力が強いらしく、ローランドやロナルドは自我を大きく揺らがされている。

「神」に対し救いを求めるような言動が目立つ。



グリゴリー

外見にコンプレックスを持つ医者。顔のいい男と子供が嫌い。

カミーユといわゆるメル友だった。



レニー

少年の霊。かなり大人びた口調で話すが、未だ正体不明。



ローザ

ロナルドの妹で、ロジャーの妻。

ロジャー曰く、たくましい女性らしい。



アドルフ

コルネリス(キース)の部下。不正を暴かれてキースを撃ち殺した……と、キースは思い込んでいるが、真相は定かでない。




・NG集


(「2. 迷い我」より)


 ……しかし、どうしたものか。

 仰向けに曇り空を見上げ、思案する。……未だ、自分の名前すらもぼんやりとして思い出せない。

 妻のことを思い出したのだから、呼び名を思い出せば……と、瞼を閉じ……られない。顔面まで骸骨なのだろうか。どういう理屈なんだ。俺は今、いったいどうやって景色を見ているんだ……?


 まあいい。とにかく、あの愛くるしい声音を思い出そう。駒鳥のような……というと語弊があるが、どう形容したものか。孔雀のように気高く、エミューのように力強く、白鳥のように凛と美しい……この形容でも足りないな。鶴のように……いや、鶴は少し違うか。しかし東洋には鶴の一声という言葉があるらしい。まさしく彼女にふさわしい言葉だ。しかし鶴か……愛くるしく、それでいてたくましく、優雅な彼女にしては少し頼りなさを感じるかもしれない。しかしタカやトンビほどわかりやすく獰猛でもない。……いやはや、どうしたものか……。


ローザ「うふふ、いつまでも聞いていたいわねぇ」

ローランド「ダメだこれ。たぶん回想シーン挟まれるまで延々と語ってる」

キース「なぁ……僕はいつまで待機すればいいんだ……?」

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