愚者の哭き声 ― Answer to certain Requiem ―

譚月遊生季

序章 前日譚

1. Genesis

 ※あらすじ欄の注意書きを一読お願いします。




 ***




 痛い。


 痛い。


 痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い、痛い痛い痛い痛い痛い。


 意識が痛みに塗り潰されていく。自我が保てない。

 偽りでもいい、嘘でもいい。……俺は……おれは、俺には、未来がない。だから、せめて、


 お前たちだけでも……




 いつからだろう。

 郷愁きょうしゅうが呪いに変わったのは。

 何よりも愛しいはずの存在が、

 時折、激しく憎いように思えてきたのは。


 記憶もがれ落ちて、痛みと苦しみだけが「俺」のすべてに塗り替わる。


 何も、わからなくなっていく。


 なぜだろう。

 なぜ、俺は、死んだのだろう。

 なぜ、死ななくてはいけなかったのだろう。

 もし願いが叶うなら、あの日々に帰りたい。

 ……もう一度、やり直したい。




 ──やり直させて



 目の前に、血塗ちまみれの女が立っている。……かたわらの墓碑ぼひで察した。

 彼女も……過去に無念を抱き、後悔を遺し、息絶えた魂だと。

 未練を抱え、さまよい続ける思念だと。


 ……その気持ちは、同じだ。


 くらい夜闇を写した瞳が、俺を見る。

 目が合った。



 ─そうでしょう


 そうでしょうとも!!!ああ、ようやく返事をしてくださったのですね。ワタシは信じていました、ワタシはお待ちしておりました……!!神の御使いよ!ワタシは間違えていなかったのですね。ワタシは正しかったのですね。良かった、これであの子も……あの子も救われる……!天使さまお救いください、ワタシを、そして……我が子を……!!




 意識の片隅で、懐かしい声を聞いた。

 ……誰の声なのか、何を伝えているのか、もう「ワタシ」にはわからなかった。


 ぼくは、誰? 何? ……どうして、


 痛みが、消えているんだろう。




 掻き消えていく自我にようやく気づいた。

 こぼれ落ちていく記憶、塗り潰されていく感情、……すり抜けていく、なけなしの希望ひかり


 ……そうして俺は、

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