独房という名の自由時間
「はいという訳で現在拘置室におります」
「壁に向かって何してるの」
「現実逃避」
「う、うんでもこの程度でいちいち現実逃避してたら持たないと思うけど?」
「しょうがないじゃないかぁ、投獄されたのなんて初めてなんだし」
「でも結構きれいだと思うなー」
「確かにイメージしていたよりもキレイだけどさ、てか汚れが埃しか見当たらないからもしかしたら僕らが初めて使用した感じかな?」
むしろ鍵の位置を変えて少しだけ整えば普通に部屋に出来るんじゃないか、そう思いながら部屋を物色していると…。
「あ……」
「どうしたの?」
「鍵が開いてた…」
「逃げます?」
「いやぁ、ここの構造知らないし、サヨが飛べたとしても出口がどこか解らないんじゃどうしようもないかと」
「別に私はここで過ごしても大丈夫です」
「監視の目があるのに?」
「問題ありません、むしろ見せつけてやりましょう!」
「あーはいはい…、おーい鍵あいてるよー」
部屋から顔を出さずに叫んでみる、少しして慌てている足音とともに自分たちを運んできた彼女が走ってきた。
「うがー!!」
走っている勢いのまま扉を閉め鍵を掛ける。
「あぶな、顔とか出してたら確実に強打してたぞ!」
「うるさい、というかなんで脱出しないの?」
「いや、脱出したところで出口わからないから出ようがないし、下手にそんな行動起こすよりも動かないほうが良いと思ったからね」
「そ、それは賢明な判断ね」
ぎこちない足取りで帰っていった。
「って帰るんかい!」
ツッコミが誰もいない廊下に響き渡る。
「そういや食べ物ってちゃんと出るのかな?」
「もしもの時は私を食べて下さいな」
「物理てな意味でも性的な意味でもここではキツイかな」
「そん、な…」
サヨがこの世の終わり見たような表情をして、膝から崩れ落ちる。
「そこまでショックを受けるのか…、ええい!」
勢いのままにサヨを抱きしめてみる、力が抜けているはずなのにしっかりとこちらをホールドしているのはさすがだと思う。
「今はってだけだよちゃんと落ち着いてからね」
顔を引くとサヨの口が少しとがっていた…しろと?
「今度な」
「ぶーぶー」
くっ、好みの姿だしすっごく可愛い…、場所が場所なので我慢せねば…。
その日は何とか理性を抑えて翌日を迎える事ができた。
「とりあえずお前らが問題無い事が解ったから仲間に入れようと思う」
どこかで見ていたのか調べものしていたのか一晩で解放された。
「…ど、どうも」
「ところでお前らは足を持っているのか?」
「足?」
「足元を見てるってことは知ってすらないのか…」
「はいっす」
「ざっくり説明するとお前達を運んできたロボットだ」
「あれを足って呼ぶんですか?」
「みんなBFとか読んでるな、そもそも正式な名称なんてないから足でいいんだよ」
「はぁ、とりあえず持ってないですけど、支給とかされるんですか?」
「ウチにそんな余裕はない、ただでさえさっきの修理でカツカツなんだがなぁ…」
よこにいる僕たちを運んできた彼女を睨む、彼女はまさか振られると思っていなかったのか瞬時に目をそらす。
「そんな訳で足を手に折れる方法は奪うか拾うしかない」
「拾う?」
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