七人の作家

達見ゆう

第1話 虐げられるカキヨミ運営

「ちくしょう! また複垢の通報だ!」


 ここは大手出版社「KARURA」が運営するWeb小説サイト「カキヨミ」の編集部兼運営の一室。


 Web担当者達の悲鳴が編集部内に響いた。


「また、通報内容を調査してアカウント停止しなくてはならない! 今日だけで怪しいアカウントは五十はあるぞ!」


「いいじゃないか、俺なんか昨日は七十ほどBANさせたぜ。終電で帰る羽目になったよ」


「俺なんか百だぜ、甘いな。おかげで泊まり込みだし、三時間しか寝てないぜ」


「私は百五十個ですよ、もう三日帰ってませんよ」


「お前ら、奴隷の鎖自慢は止めろ」


 編集長の下北沢が嗜めるが、編集部員達の自虐は止まらない。


「だって、編集長。今年から複垢によるアルゴリズムを改正したら、BANしてもランキングダウンしないとわかった途端に不正が激増。やってられませんよ」


「作品を読もうにも、複垢消しと怪しい通報の処理に追われて読むどころじゃないし」


 編集部員達は口々に不満を漏らす。


「とあるネット掲示板だと『Wild SAMURAI 』と呼ばれる集団の仕業らしいですが、証拠ありませんから、容疑者の本垢BANができないし」


「よせ、本垢BANなんてしたら、徒党を組んでデタラメな通報を山ほどしてくるぞ」


 そう、不正をしているとされるWeb作家集団『Wild SAMURAI 』。名前の由来は某映画の野武士を直訳したものとも、メンバーの頭文字を繋いだものとも言われるがはっきりしない。


 とにかく規約禁止のはずなのに、Wild SAMURAI達は何らかの手口で複数のアカウントを作り、カモフラージュ含めて沢山の偽評価が付けられていた。

 そのため、更新されていないはずの作品に毎日のように不自然な評価がつき、ランキングは上位と中位の間は異常なほど差がつき、読者選考が機能不全状態に陥っていた。


「うふふふ、わたくしなんか通報調査に追われて一週間寝てな……」


 ある編集部員が壊れた笑顔で呟きながら、直立不動の状態で倒れた。


「お、おいっ! 誰か119番しろっ」


 運営委員達が右往左往する地獄絵図を目の当たりにして、下北沢は決断した。


「仕方ない、最終手段を取る。コンテストにプロ作家を迎え入れるぞっ!!」


「「「「な、なんだってー?!」」」」

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