しましまエプロン

クロノスと化した御大

プロローグ

「ねぇ、フクロオオカミちゃんってさ、何か夢とかある?」

俺は彼女の白々とした横顔を眺めながら不思議そうな顔をして言った。すると、彼女は全く顔を動かさないままうつむいた。

その様子を見て、咄嗟に次の言葉を添える。

「いや、アニマルガールになってから動物だった頃よりもいろんな事が出来るようになって、皆が夢を持つようになったでしょ。フクロオオカミちゃんには無いのかなーって」

だが彼女はうつむいたままずっと黙っている。

「もしかして、まずい事聞いちゃった…?」

困惑する自分、すると彼女はゆっくり頭を上げ、空を見上げながら言った

「私、子供が欲しいの」

小さく開いた口から出た言葉は、その境遇と合間ってとても重い物だった。

「え、でもそれって…」

その言葉を聞いた途端、自然と口が動いてしまった。すると彼女は俺の方を向きながらこう言った

「自分でも、わかってるから。でも、小さい子たちがいる。それだけでも、フクロオオカミ、嬉しい」

そして彼女は笑顔で、

「子供達でフクロをいっぱいにしたい、それが、私の夢」

そう言い放った彼女の顔は、儚くもとても美しい、まさに母親のような優しい顔をしていた。

俺達二人が駄弁っていた木の下に、風が吹く。その時の彼女の靡くベージュ色の髪は、此の世で一番美しいと思うほど綺麗だったのを覚えている。

ーーこれは、俺と彼女が一緒に過ごした、優しい優しい物語。誰にも忘れて欲しくない物語

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