第20話 ニューパロマは冬だったんだ~
レキシントン港に碇を下ろしたパドマ号に別れを告げて、ショウ達は竜でニューパロマの大使館へと向かう。
「聞いてはいたけど、ニューパロマの冬は寒いね~」
サンズで大使館までひとっ飛びだったし、上着を着込んでいたが、ゴルチェ大陸の暖かさに慣れたショウは身震いする。
先行してパドマ号の入港を知らせたレグナム大尉の報告を聞くやいなやパシャム大使は、ショウの受け入れを召し使い達にアレコレ指示していた。
「ショウ王子~、よくご無事で~」
階段を転がり落ちそうだとショウは心配する。
「パシャム大使、帰ってきました。そんなに慌てなくても、交代の艦が来るまでここに滞在しますよ」
「どれほど私が心配していたか! ショウ王子の顔を見られて、とても幸せです」
出迎えのパシャム大使の大袈裟な歓迎振りに、大使館に帰って来たのだと実感したが、宴会とか言い出さないでくれと思った。半年以上の航海で、こうして大使館に帰ってみると疲労でクタクタだと気づいたショウは、パシャム大使にお風呂に入りたいと告げる。
「勿論、お風呂も用意してあります。私としたことが、長旅から帰られたショウ王子をお引き止めして……」
疲れた様子に、パシャム大使はショウを風呂へと解放してくれた。
「あ~、いい気持ちだなぁ~。航海で不便なのは、お風呂に入れない事だよね~」
香油の入ったお湯に浸かっていると、疲れからウトウトする。
「ショウ王子、新しいお湯をお持ちしました」
うっかり眠りかけていたショウだったが、侍従が新しいお湯を運んできたので、溺れはしなかった。
「眠い……」
ウトウトしながら、ショウは子供のように侍従に寝間着を着せて貰い、ベッドにダイブした。パシャム大使は今夜の宴会は無理そうだと、すやすや眠るショウを眺めて溜め息をつく。
しかし、ワンダーやシーガルやレグナム大尉は疲れていても、ショウのようには寝るわけにはいかず、パシャム大使に報告をしなければいけなかった。
「ワンダー君、君は士官候補生としての軍艦乗務の日数が達成したので、士官への試験が届いてます。今夜は疲れたでしょうから、休んで試験を受けなさい。答案用紙は、パドマ号でレイテに送られます」
ワンダーは疲れもぶっ飛んで、気合いを入れ直す。
「パシャム大使、今夜でも大丈夫です」
合格すれば、受験日が士官に任官された日になるとワンダーは急いだが、パシャム大使は疲れた頭で重要な試験を受けるべきでは無いと諭した。
シーガルにも祖父のフラナガン宰相から分厚い手紙が届いていた。
「シーガル君は、ゴルチェ大陸の測量を正式に命じられてます。少し早いですが、官僚への第一歩ですから、しっかりと役目を果たしなさい」
ゴルチェ大陸への航海の最中に、ワンダーは十五歳に、シーガルは十四歳になっていた。二人は大人への第一歩を踏みだした喜びに、疲れもどこかへ飛んでいった気持ちになって、パシャム大使の前を辞した。
ショウが夢の中でゴルチェ大陸からレイテへと航行していた頃、パシャム大使はアスラン王への報告書を書いていた。
「ショウ王子は、きっとゴルチェ大陸西海岸の測量を成し遂げられるでしょう。そして、新航路の発見もきっと!」
パシャム大使は、自分がお世話しているショウが、尊敬してやまないアスラン王の後継者になるのだと思うと、朝になるのが待ち遠しかった。
「ショウ王子がお目覚めになったら、私がお世話をしたい!」
生憎と、ショウは疲れ切っていたので、パシャム大使が待っているのも知らず、昼過ぎまで爆睡するのだった。
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