第5話 最弱勇者は紐男
街を出てすぐ、目の前に絶望が履いよってきた。
「よぉスライム……また会ったじゃねぇか……」
奴はスライム。二つ名をつけるとしたら《絶望の液体》。
「どうしたの?カグラ?」
「いいかマナー、こいつはな、最強クラスのモンスターだ」
「クラス?モンスター?」
「日本語は大丈夫なのに英語はダメなのか…まぁつまりは魔物だ。めちゃくちゃ強い魔物」
「死んじゃう?」
「ああ……死ぬ」
「え…」
マナーの顔が歪む。
目尻に涙が溜まっていく。
「お、おい!泣くなって!まだ絶対死ぬとは言ってないだろ!」
「でも……最強だって……」
「大丈夫だ!俺たちはこいつに勝つことができる!」
「どうやって?」
「こいつを装備しろ」
「え」
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結論から言うとマナーはスピードタイプのステータスで、素早い動きでナイフでスライムを切り刻んでいった。
しかしやはりホームレスで体が痩せてしまっているせいかあまり体力も無く(俺よりはあるが)、使ったことのない武器の扱いはやはりまだまだ素人だった(おれもだが)。
でもスライムくらいなら一人で倒せるみたいで、まるで紐になった気分である。
ちなみに俺はどんな武器も魔法も使いこなすことはできない。
どういう訳か他のスキルが全部無く、その武器や動きを経験することで手に入るはずのスキルも覚えて無いのだ。
「カグラ〜……疲れたぁ〜……」
連戦で、ぐでんぐでんになったマナーがよってきた。
汗だくで服がビショビショだ。
「凄いなぁお前。割と戦いの才能あるのかもな」
「やった!これでスライムも倒せる?」
「さっき沢山倒してたじゃないか」
「え、嘘、スライム最強なんでしょ?勝てるわけないよ」
「あれは嘘だ。実は雑魚」
「雑魚?カグラはなんで勝てないの?」
「そりゃあお前……俺がこの世界で一番弱いからだ」
「カグラ、弱いの?」
「スライムより弱い。前死にかけた」
「…死にかけたの?」
「あぁ……」
マナーが俺を見て悲しそうな顔をする。
恐らく死ぬ、という言葉になにやら深い思い入れがあるのだろう。
長いホームレス生活のせいで死に敏感になってしまったのだろうか。
「カグラ……可哀想……」
すると、マナーが決意を込めた眼差しでこちらを見て言う。
「カグラは…私がずっと守るから……死なないで……!」
あぁ……本当に紐になっちまったぜ……
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「あれ?お前、レベル上がったんじゃない?」
「レベル?」
そういえば、長いことマナー以外の人間とあってないせいか、この世界のレベルという概念を完全に忘れていた。
マナーにもレベルはあるのだろうか。
「久しぶりのメニュー!解析レンズを使用!」
目に何かが入ってくる感覚が来る。
「痛たたたたたたたたた!コンタクトレンズじゃねぇのかよ!」
「カグラ!?どうしたの!?」
「うおぉぉぉぉぉ……どんなに探しても解析レンズが一つしか手に入れられなかったのは、消費アイテムじゃなかったからなのか…」
なるほど、メニューのアクセサリー覧に解析レンズが装備されているということは、アクセサリー系統のアイテムだったと言うわけか。無くなるともったいないと思って使わなかったから知らんかった。
さて、
「よし、マナーのレベルを見てやろう」
「大丈夫…?」
「あぁ…うん…」
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マナー
Level:8
HP:200
MP:130
攻撃力:53
筋力:43
防御力:40
魔力:71
魔防:51
素早さ:112
技:87
幸運:32
武器:ナイフ
防具:簡素な服
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「へぇ…序盤でこのステータスだったら結構強いんじゃないか?」
「私、強いの?」
「俺より数倍強いぜ」
「わーい!」
レベル8でこの戦闘力なら成長率も相当高いと思う。
高い素早さを生かして慎重に敵の体力を削っていくタイプだな。
「よし、じゃあお前にこいつをやろう」
「何をくれるの?」
「お前が今装備できる最強装備だ」
「最強?」
「お前、その言葉すきだろ」
「そうかな?」
「いいからさっさと装備しろ」
「わかった」
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マナー
武器:ソードブレイカー
10%の確率で敵の攻撃力を減少させる。
防具:ハイドローブ
敵に見つかりにくくなる。
素早さ+10
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ミカエルマントは属性耐性は凄いが防御力は大したことないから外しておいた。
ていうか多分あれは俺が使うことになると思う。
唯一出しても耐えられるからな……
「おぉ…なかなか強いキャラクターになったな」
「そう?」
「ああ、黒いローブがアサシンみたいだ」
「アサシン?」
と、歩いていると前の方にでかい街が見えてきた。
「あれは五大都市の一つ、アルティカーナだな。軍事の面でとても優れている平和な都市だ。」
「むぅ……難しい」
こいつはラッキーだ。五大都市なら俺が前世に戻る手掛かりが何かあるかもしれない。
魔法が特に発達していることで有名な都市であるのだからそういうのもお手の物だろう。
俺は淡い期待を膨らませ、大都市に入っていった。
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