第2話 最弱勇者の戦法

 これは……あれか?ユニークスキルってやつか?


 しかしまぁ『最弱の勇者スキル』とはまたなんと失礼な名前なんだ。


 もっとステータスも爆上げして武器もチャラチャラ持たせやがれ。


「ふむ……他力本願ねぇ…」


 最弱の勇者スキルと言う枠組みがあるのなら他にもスキルは開花するのだろうか?


 まぁいずれにせよ今俺がこの異世界で信用できるのはこのスキルしかない訳だ。


 他力本願……できればクソ強ぇモンスターを召喚できるみたいなスキルであって欲しいなぁ……


 よし、使ってみるか。


「他力本願!」


 無意識に振りかざした右手が光り出す。



 ポピュウ



 ……え?



 何さっきの腑抜けた音は。


 一体どんなことが起こるんだ…? 

 


「なんも起こらねー」



 もしかしたらステータス強化スキルかもしれないと淡い期待をこめてステータスを確認する。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 攻撃力:1


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「いやだぁぁぁぁあ!見たくないぃぃぃい!」


 俺は目にも留まらぬ速度でメニューを閉じる。


 駄目だ……あれは駄目なやつだ…


 ステータスが1になるなんて……


「も、もしかしたら他の攻撃力を下げて他のステータスが上昇ってスキルかも…」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 防御力:1


 筋力:1


 魔力:1


 素早さ:1


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……」


 スキルにも望みは無し、と……


 ガサガサ


「誰でしょうか!?」


「グルルルル…」


 草むらの中から狼のようなモンスターがでてきた。これはウルフ。そのまんまである。


 攻撃力と素早さが高い少し厄介なモンスターで、最初はこいつの集団に苦しめられる。


「ん?集団?」


 奥の草むらからゾロゾロとウルフがなだれ込んでくる。


「……メニュー」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 戦闘力:1


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 総合評価にも見捨てられてしまった……


 このままだとここで死んでしまう…


 ウルフの一匹が俺に襲いかかってくる。


「グルラァ!」


 ここは逃げるしかない!俺の貧弱な体だと相手の攻撃一発で昇天してしまう。それだけは避けたい!


 俺が走り出すとウルフもどんどん追いかけてくる。


「ぎゃあぁぁぁあ!!」


 逃げる!逃げる!死にたくない!


 俺は森の中を駆けて行った。


 しかしこのままだとジリ貧だ!いつまでも逃げるしかないが、俺の素早さはたったの1。ウルフはどんどんと追いついてくる。


 何か…攻撃手段は………


「駄目だ…思いつかない…」


 クソッ!


 アイテムはバカみたいにあるのに……ん?目の前に…大きな段差……


「これだ!」


 そう言って俺はメニューを開きながら段差を登り、そこでウルフの集団目掛けてジャンプした。


 そしていらないほどある武器をアイテムボックスから出し……


「エクスカリバーを捨てる!!デュランダルを捨てる!グングニルを捨てる!ミョルニルを捨てる!」


 ポンポンポンと溢れ出てきたレア装備達はウルフ目掛けて落下し見事に突き刺さった。


「よっしゃぁぁぁあ!!!」


 見事全ステータス1の俺はウルフに打ち勝った!!


 メニューを開くとステータスは5に戻っていた。


「しかしもうこの戦法は使えないな…」


 なくなってしまった武器達を惜しみながら俺は山を下って行った。

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