即興小説まとめ
木兎 みるく
ヒトカラ(15分)
お題:近い成功 必須要素:個室 制限時間:15分
あと3点。あと3点取れれば1位になれるのに。私はソファーに座り込み、マイクを放り投げた。もちろん、ちゃんと柔らかいところに落ちるように気を使ってだけど。
テレビ画面には、94点、2位おめでとう、の文字。アカウントを取った時のまま何も変更されていないアバターが、両手を挙げてぴょんぴょんしている。私は嬉しくないのに、何をそんなに喜んでるんだか。
この部屋にこもって早4時間。時々違う曲をはさみつつも、1位目指してずっとこの曲を歌い続けている。ランキングの2位から下しばらくはみんな私の名前が並んでいる。それでもどうしても1位の人に勝てない。1位、96点、「あああああ」さん。
携帯が震える。母からの、「何時に帰ってくるの?」メールだった。「1位取れたら」と、意味のわからないであろう返信をして再びマイクを握る。
さあ、あああああさん、次こそ打ち負かしてやるわよ。1位は私、いいいいいが頂きます。
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