独立学園の魔術書

@cocoa41958

プロローグ

―――20XX年。魔法が科学的に解明され、科学と平行して利用される現代となった。


 魔法の種類は攻撃魔術や医療魔術、錬金術など例を挙げればきりがないほど多岐に渡るが、一番加速させたのが世界中の軍事力だった。魔法が解明され、人間以上の力を手にした者が存在する世界で人間を殺すための武器などお払い箱となってしまったのだ。



 そのため国連は魔法技術を管理、研究、そして利用するために太平洋上に人工島を作り、その島に1000を越える学園や街などを建設した。


 魔法技術を全世界に広めようと考えた国連はそこで世界中の子供たちの入学を認めた。


 魔法が解明されて数百年たった現代では魔法技術が日常生活でも役立ち、まさに世界中の人々が待ち望んでいた技術の誕生ということになったのだった。



 これは理事長を主権者とし、どの国にも属すことのない独立学園で繰り広げられる物語である。



※※※








「それでは、魔法科高等部に進学する理由を教えてください」



 俺は質問をされていた。目の前にいるのは眼鏡をかけてスーツを着こなし、睨み付けるようにして俺を見る面接官。片手にもったボールペンで紙に何かを記入しながら質問をしてきたのだ。



 一度唾を飲んだ俺は大きく息を吸って答える。



「―――自分の目標のためです」



「その目標とはなんですか?」



 返ってきた質問に対して再び同じように唾を飲み、同じくらいの間を開けて答えた。



「―――魔術書グリモワールを手に入れることです」



「・・・分かりました。では次は、実技試験になります。試験監督の講師が来るので、少しお待ちください」



「分かりました」



 面接官は俺の言ったことに何と返せばいいのか迷ったように答えた。魔術書グリモワールと言うのは数百年前に発見された魔法が載っていると言われている本であり、世界を変える力・・・世界を滅ぼす力を持つと言われている。


 俺はその本を手にして――――世界を変える。



 数分して出ていった面接官が数人の講師を連れて入ってきた。講師たちを目で追いながら観察し、腰に警棒のような物を携えている。講師の一人が面接官が座っていた席の前にある机を覗き込み、上に置いてある紙に目を通した。



「神風かみかぜ・・・隼人はやと君でいいのかな?」



「はい」



 小首を傾げながら講師は問いかけ、それに対して淡白な返事をした俺。すると講師の一人が立てと合図をするので、辺りを見渡して不安になりながら恐る恐る立ち上がる。



「今から実技試験を行います。この学園では初等部に知識を、中等部に技術的な面を習いますよね?」



 いきなり口を動かした面接官の方に視線を向け、相槌を打つようにしてうなずく。もちろん初等部では全て知識なのかと言われたからそうではないが、8割方はそうなので否定する必要もないだろう。


 俺が相槌を打つようにしてうなずく光景を見た面接官は、下がってきたメガネをあげて再び言葉を続ける。



「中等部から高等部に進学する方法は一つです。この講師・・・一人でも誰でもいいので、その実力を認められてください。制限時間は30分です。


 攻撃魔術、錬金術、召喚魔術、その他使える物は何を使っても構いません。得物がほしい場合も言ってください」



「大丈夫です。得物それについては持ってます」



 得意気に言った俺は腰に下げていた刀を抜く。日本刀は世界の剣とは違い、生産している国は日本以外にはない。だからこそ日本は独自の剣術流派を持っていたりする。


・・・まあ、ただの日本刀ではないのだが。



 少し悩んで俺は一人の講師を指差した。



「この方に相手をしてもらってもいいですか?」



「構いませんよ。では、始めてください」



 面接官の合図と共に駆け出し、思いきり斬りかかる俺。講師は手早く腰に携えている警棒を抜き、俺の刀を余裕で受け止める。



―――こうして試験が始まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る