第22話 君は私のもの

[秋本家破産]をスクープした新聞は売れに売れまくり、社交界はこの話で持ちきりとなった。




この話は日頃から華族制度に不満を持っている、一般市民にも広まり三姫の家に石や《ざまあみろ》と書かれた紙等が投げられたりしていた。




それゆえに三姫達家族4人は家から出られない状態になり、ほぼ軟禁生活を強いられていた。










秋本家の醜聞はもちろん悠仁の耳に直ぐに入り今父親である椿伯爵に三姫との結婚の許しを得る懇願をしていた。






「父上お願いします。私と彼女の結婚を許して下さい!」




悠仁は自分の父親に何度目かわからない程に頭を下げ続けていた。




「ならぬ!元々身分も我が家より低く借金がある家の娘など嫁に迎え入れられぬわ!」




悠仁の父親、椿家当主は見た目は悠仁を老けさせた感じであるが性格は悠仁と正反対であり2人はよく言い合いをしていた。




身分や世間体を気にしないで好きな人と結婚したい悠仁に反して伯爵は権力こそ全てという考えの人であった。




「彼女だけが唯一私を一人の人間、いえ、男としてみてくれているのです!借金など我が家が出せばいいだけです!」




悠仁も負けられない、絶対に礼子と結婚するんだという気持ちで父親とぶつかる。




「何バカな事を言っておる?先祖代々守ってきた財産をそんな家の娘の為に使うわけにはいかぬ。その娘がそんなによいなら自分の力で解決するんだな」




椿伯爵は、『これ以上話すことはない出ていけ』、という意味を込めて、秋本家のスキャンダルが載っている新聞を悠仁に向かって投げると、思いっきり新聞が顔に当たる。




「私は愛する人と結婚できないだけではなく、守れもしないのか?」




悠仁は庭に出ると、非力な自分を許せないという思いを近くにある木に拳を何度もぶつけ、そのまま指から血が流しては、その場にしゃがみ込んだ。




それからというものも、悠仁は職に着こうと就活をし、数え切れない程の会社を当たるが、『世間知らずの金持ち坊ちゃんに勤まるわけない』と民間企業からは相手にされず、それならば語学力を生かしてと思い、外務省へ出向くが『政治家の出でもない君には無理だね』と全く相手にされなかった。




悠仁は人生で初めてガムシャラに働きそして挫折を味わった。ふと気がつけば、季節は春へと移りはじめ、桜の木につぼみができはじめていた。




「もう、春になるのか.....。あれから、何ヶ月も三姫に会えてないな.....。気付いたら、東京駅に来ちゃったね....。」




悠仁は東京駅に植えてある、桜の木の下に立ち止まり上へと視線をげると、三姫との思い出の過去を振り返る。




「よく考えれば、この場所から全てが始まったんだよね。」




ここで、告白の返事を聞いて恋人になった。




蒸気機関車での横浜への日帰り旅行も、ここから出発した。




たった数ヶ月前の事なのに、とても懐かしく思う。




悠仁が感傷に浸っていると、「号外!号外!秋本家について最新の情報が手に入ったよ!」、新聞を販売している少年の声が耳に入ってきた。




その少年の呼び掛けに、一瞬で人がむらがり、新聞が飛ぶように売れていく。




悠仁も人混みをわけ、なんとか一部購入し、恐る恐る、記事を読み進めていくと、手から新聞が滑り落ちては、風にかっさられていった




「嘘だよね?こんな事ありえない、だって・・・」




新聞の記事には:




【数ヶ月前に華族でもある、秋本家の破産話が、瞬く間に世間へ知れ渡り、注目を浴びました。 この度とある筋からの情報によりますと、借金の返済のため、秋本家の長女である礼子さんは、ある大富豪へ嫁入りする事が決まりました。なお、結婚式は.... 】




と載っていた。




「そんな....ありえない.....いや、 許さない!」






三姫.... は永遠に私のもの!誰にも渡さない!












私は君にしか恋ができないのだ。












なにが何でも三姫を渡さないと誓った悠仁はある人物に会いに向かう為に車に乗り込んだ。

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