第12話 好きという感情は?
噂の影響は落ち着いたものの、まだまだ三姫への当たりはまだきつかった。
門から玄関へと続く道を召使が毎朝箒で掃除をするのだが、例の噂が出て以来、差出人不明の手紙が複数落ちているのが見つかる。
内容は
『ブスは引っ込んでいなさい!』や『私の悠仁様を渡さないわ~!』
悪口から悲鳴に近いものまで書かれてあった。
そんな逆風の中にいてもいつか良い思い出になる事を信じて、気にしない、気にしないと三姫は自分に言い聞かせながら日々を過ごしていた。
ただ今回の噂をきっかけに、三姫はふと一つ気になる事があった
「ねぇ敬子さん。悠仁様って女性に人気なのに一度も浮ついた話が出て来たことないわよね?もちろん私との噂は数に入れないわよ」
「そう言われると、そうですね。確かに不思議ですね」
仮に恋人がいたとしてもあの容姿だと外で人目について直ぐに露呈するだろうし、自宅で会瀬していたとしても召使達が噂をしては今回みたいに遅かれ早かれ世間に知られる。
確かに不自然ね。
「あんなに見た目がいいから、てっきりどの人と結婚しようかと選び放題で常日頃から周りの方と話し合っているのかと思ったわ」
気分転換してくると敬子に言って自室を出ると、目の前に広がるお庭を歩き三姫は咲いているお花を見つけて、一本抜くと、(悠仁様に好きな人が)いる、いない、いる、いないと言いながら花びらを一枚一枚ちぎっては花占いをしていた。
気付いたら最後の一枚になり、【いる】で終わった。
全部抜き取られた花びらの溜まりが三姫の足元にできる。
「そもそも人を好きになると...どうすいう感じになるのかしら?」
女学校育ちで普段接する異性は父と兄だけの三姫には恋する心がわからなかった。
「悠仁さまお元気かしら?それにしても寒いわ~」
三姫は手をふ~っと息で温めながら自分の部屋へと戻っていた。
三姫が作った花びらの溜まりは風にさらわれて舞い上がりそして消えていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます