番外編八~たけるを治療した医者(与作)視点~
(ふぅ...今日も一日頑張るかな)
儂は医者をしておる与作だ。
最近は定期受診の者以外はあまり来ぬのだ。
そのため、昼前までは暇なのだ。
病院には看護師の妻、カヲリが居る。
「カヲリ、おはよう」
「あぁ、与作さん、おはようございます」
「今日も朝から開院準備か?」
「えぇ、先に済ませておいた方が後が楽でしょ?」
「そうだな」
そして、儂とカヲリの二人で病院の準備を済ませた。
その後、朝食を二人で食べた。
今日は、病院に居ること以外することが無い。
その為、朝食を食べた儂は病院の診察室で座っている事にした。
座るだけでは物足りないから、新聞を読み始めた。
━━ガタガタガタ...ドォォォォォォォォォォォォォン!!!
大きな音とともに激しい揺れが儂を襲って来た。
「ぬぉ!?なんだなんだ!?」
しばらく揺れていた。
揺れが収まって、周りを見たら、注射器などが入っていた棚が診察室で斜めに倒れていた。
中に入っていた物が半分ほどが落ちて割れてしまっていた。
(危ない...)
儂はスリッパを履いていたため、怪我せずに歩くことが出来る。
儂は急いでカヲリが居る看護室へ
「与作さん!」
「カヲリ、大丈夫か!」
「はい、大丈夫です!与作さんは大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫だ」
「じゃあ、早く避難しましょう、とりあえず、何かあった時のために薬だけはカバンに詰めておきました」
「分かった、あとは使える注射だけ持っていこう」
そして儂とカヲリは病院の裏にある高台に向かった。
━━━急いで高台に向かった儂らは、一番乗りだったようだ。
この高台は普段は住宅街を見下ろす場所で、老人の憩いの場でもあった。
儂も本当に暇な時はここに来ている。
住宅街を見下ろせる端っこには、落下防止の柵が設けられてある。
しばらくしてからぞろぞろと人がやって来た 。
およそ二十人位が集まってきた。
儂とカヲリは二人で持ってきたものを確認していた。
持ってきたものは...
・下痢止め ×150錠
・成長薬 ×200錠
・頭痛薬 ×160錠
・麻酔薬 ×5袋
・ぶどう糖液 ×30袋
・水肺防止薬 ×5液
・注射器 ×14器
「あ!あれを見ろ!」
確認が終わる頃、そんな声が聞こえてきた。
その方向には、海がある。
何なのだろうと思い、立ってから見てみると、なんということだろうか、高台の柵より少し高い波が押し寄せてきているではないか。
避難している人が一同に騒ぎ始めた
(これでは命を落としかねん!!)
「みな!落ち着くのだ!みんなで柵から離れれば良い事だ!」
儂は大きな声でそう叫ぶと他の皆は一瞬ポカーンとなったが、すぐに指示を仰いでいった。
そして、皆が離れた頃
━━バシャァン!
という音と共に波が高台へと浸入してきた。
幸か不幸か波は離れた場所に少し及ばず、戻って行ってしまった。
「え、あそこ...人が...人が倒れてる!」
そんな声が聞こえてきた。指した先である柵の方を見ると本当に人が倒れていた
「なんだと!...事実なのが悲しいが」
儂は事実確認をした後、ショックを受けた。
命を落としかけている自体に陥ってしまった。
それから、その人を男性三人で柵から離した。
儂はその人に水肺防止薬を打った。
それから、しばらくして、その人が目を覚ました。
男だな、この顔は
「あ、目が覚めたかい?」
「あ、はい...あなたは?」
「儂かい?儂は医者だ」
...「「「「「えぇ!!???医者なのぉぉぉぉ!!!」」」」」...
「こら!騒ぐんじゃない!」
また騒ぐ...なんなんだこの集団は、遊びじゃないんだぞ...
「あの、俺津波に流されていたはずですけど何故ここに?」
「儂らもよく分からん。波がこの高台に入り込んで、その波が引いて行ったら君がいたからな」
「そうだったんですか...すいません」
「良いんだよ、自然とやらは無限の可能性を持っているからな...」
「そうなんですね」
彼は現状に至った訳が全く分かっていなかった。
まあ儂も同じだが。
それから、彼は避難している人と話していた。
翌朝、知り合いが見つかったそうだ。
しかし、津波が引くまで身動きが取れないから、引くのを待つらしい。
━━そして、一週間後。津波が完全に引いた。
その日の朝、出発すると言って、準備をしていた。
「今までお世話になりました」
彼はそう言って頭を下げて、出発した。
「良かったですね、大事に至らなくて」
「何を言っているんだ!大事に至らないように儂らが居るんだろ?違うか!?」
「...えぇ、そうですね。ごめんなさい」
カヲリが変なことを言うもんだからつい大きな声で叫んでしまった。
それから儂らは津波の避難指示が解除されるまで高台で過ごす事になった。
それまでの間、食事などは支援物資で沢山届いた。
トラックで沢山届けられるもんだから取り合っても大丈夫だった。
━━━三ヶ月後、避難指示が解除された。
その間に儂の病院を見たが、津波に流されてしまって、もう無かった。
その為、その高台を拠点に病院を開く事にした。
幸か不幸か医療用の薬などは支援物資と一緒に届いていた為、しばらく診察や治療に困らなかった。
━━━翌年、儂らは病院の再建をすることにした。
申請してみたら、国から建設費を免除して貰えることになったのだ。
そして、儂らは新しい病院で診察を再会することができるようになった。
“そして、この医者は国から医療従事者として讃えられる事になった”
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます