第16話 Marriage -The Road to Happiness-

私はフェーニャ・オドナチェヴァと出会った

妹が宇宙人となって少し経ったある日

ほぼ強制的の紹介 会合となった


フェーニャは私より3つ年下で

妹が働いている美容院でできた友人らしい


彼女は穏やかな微笑みを魅せた人で

それが出会った頃のタチアーナを彷彿させたが

私はそれに対して特に何も思わなかった

何も思わないことにした


彼女に問題はない 何も悪くない

特別美人でもないが 魅力的な人だ

問題は私だけにある


私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ

私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ

永遠ニズット 死ヌルソノ日マデ


ターニャやタチアーナの時と同じように

どうせ股間のコレは役立たずなので

この関係もすぐに消えると思っていた


妹が不満を抱かない程度にお互い何度か会い

結局サヨナラという結末になるだろう

しばらくそう思っていたが


付き合いは存外長く保たれた

思いの他穏やかに続いていた


「結婚するまで君の体を大事にしたい」

適当なことを言って肉体関係も避けていたが

彼女はそれに対して不満を唱えるどころか

こんな私に好意すら抱いてくれた


父親の酒癖が悪かった彼女には

私の下戸なところが特に良かったらしい


酒の美味さがさっぱり分からない上に

飲むと気持ち悪くなってしまう

そんな下戸体質を私は恥とも思っていたが

思わぬ所で惹かれることもあると知り そして


私もいつの間にかフェーニャに対して

好意を抱くようになっていた


フェーニャとの時間は終始穏やかで

ターニャやタチアーナの時のような激しさはないが

幾度となく逢瀬を重ねる内に私は

共にいる時間が掛け替えのないものに思えてきていた

幾度となく逢瀬を重ねる内に彼女も

共にいる時間が掛け替えのないものに思えてくれたので


私達はついに結婚した


ただ

私ハ去勢サレタカラ 異性トハ突キ合エナイ

私ハ去勢サレタカラ 異性トハ突キ合エナイ


そんな事実があるので

初夜でこの関係が崩れる可能性も危惧したが


小さいまま 役立たずで

白い胤を吐くだけの私を フェーニャは

責めたりしなかった 罵ったりしなかった

辟易して 気味悪がったりしなかった


いやらしい小説にあるような

官能的な夜を与えることはできないが

フェーニャはそれで構わないと言い

そっと裸体を寄り添えてくれる


ベッドの上で彼女の鼓動を感じる

ベッドの上で彼女のぬくもりを感じる

たった それだけで


心の中に高く築かれた 大きな氷河が崩れ

雪解け水となって流れゆくのを感じた

穏やかに流れる時の中で

確かな幸福を感じていた


嗚呼 幸福の青い鳥がやっと舞い降りてくれた


翌朝 眩しい光の中でフェーニャを柔らかく抱きしめ

彼女の耳へ愛していると改めて囁き

嬉しそうな彼女の微笑みを得て


私は名実共にフェーニャ・オドナチェヴァと夫婦となった

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