第15話 A Little Sister's Marriage -Reality & Delusion-

それは私にとって突然の出来事だった

私の妹が結婚した

何処ぞの好青年と幸福な家庭を築いていくらしい


でも そんなの私には関係ない

縁のない 対岸の火事だ


私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ

私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ

永遠ニズット 死ヌルソノ日マデ


故に仕事の他にはオナニー オナニー

楽しみは全てオナニー オナニー


か弱い女性が私に組み敷かれ

次第に私の支配下に堕ちてゆく

そんな妄想をしながらオナニー

それだけでいい


私が建てたこの家の 私専用のこの部屋で

独りきりになった時だけ私は王となれる

外の状況がどうなっていようと構うことなく

独りきりになった時だけ私は王となれる


もう外のことなんて どうでもいいと思っていた

現実の女性なんて どうでもいいと思っていた

こんな私を誰にどう思われようと どうでもいいと思っていた


妹が心配しようと 適当なことを言ってかわす

部屋で何してるのか 問い質してこようと

やはり適当なことを言ってかわす


私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ

私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ

永遠ニズット 死ヌルソノ日マデ


その事実が変わらない限り 破壊されない限り

現実は私に普遍的な幸福を与えてはくれない

誰が憂えども どんな努力をしても

神は私に普遍的な幸福を与えてはくれない


こんな私を慰めてくれるのは 満たしてくれるのは

妄想オナニーだけだ


パタリ 自室の扉を閉めて

私は妹とは住む世界が違うのだと示す

通常の幸福をどうしても得られない私は

妹とは住む世界が違うのだと示す


こんな私の姿を見て 妹は一つ溜め息をついたようだが

何もかもこれでお終い 終了 その筈だったが


ある日 ある時 私の部屋は

その妹によって強制的に開かれた


妹はとある女性を紹介するから

結婚前提に付き合えと言ってきた


私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ

私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイノニ?


だが 妹は問答無用で

私の独りきり王国を撤去した


これまで妹に対して特に印象は抱いていなかった

それなのに いやそれだからこそ この時の妹が

私には正体不明の宇宙人に見えてならなかった

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