第11話 Ressentiment
一瞬自分の目に映るものが
嘘偽りではないかという気がした
パワーエリートへの登竜門であるモスクワ大学
大いに努力し 力をつけた上で臨んだその入試
試験自体にもとても手ごたえを感じたのだが
結果は不合格
あんなに努力したのに 結果を残したのに
こんな結末はありえないと思ったし
こんな結末になってしまったのは成績以外の
何か別の所で拒絶されたに違いないとも思った
アンドレイが頑張ったのはよく分かっている
今回は運が悪かっただけ 次はきっと上手くいくさ
父は私をそう慰めたが そうとは思えない上
私は父の顔を見た時に不意に思ってしまった
もしかしたら この結果は父のせいではないか?
戦争時に祖国を裏切った父のせいではないか?
一度とは言え祖国に弓引いた輩は信用できない
勿論そんな輩の息子も同罪だ
故にパワーエリートにはなれない
いくら努力しても 結果を残しても
いくら挑戦しても 誰に勝っても
絶対になれない
よくよく考えれば そのようなことはない筈なのだが
あの時の私にはそうとしか考えられず
頑張っても無駄
何やろうとしても無駄と
次 挑戦する心を失ってしまったのだ
打ちひしがれたその心のまま
私はモスクワ大学への進学 パワーエリートになるのを諦め
工業専門学校の通信工学の道へと進むことにしたが
やはり進んだ道に満足なんてできなかった
進んだ道に対して不満だらけだったから
その後もしばらく 自分の目に映るものが
嘘偽りではないかという気がしていた
私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ
私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ
永遠ニズット 死ヌルソノ日マデ
その上 No.1にもなれなかったので
パワーエリートにもなれない
国に 人に 世界に そして神に
全てに対して唾を吐きつけたくなるくそったれの中で
明日以降も生きなければならない
そんな人生の先に 光なんて全く見えなかったからだ
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