第8話 15 Years Old -Runaway from the E.D.Complex-

私は思春期に入ってすぐ

自分の体が何処かおかしいと

薄々感じるようになった


私も人並みに異性に対し いやらしいことに対し

興味を持つようになってきたのだが

私のイチモツは他人のそれと何処か違った

密かに聞いた話によると いやらしい気分になると

股間が固く膨れるようになるらしいが

私のイチモツは小さく柔らかいままだった


白い子胤を吐くことだけは出来るようだが

その瞬間も私のイチモツは小さく柔らかいままだった


嗚呼 私のコレはダメだ


私はその時そう感じ 絶望したが

そのことを真正面から見ることができなかった

私は神によって去勢されたと心で嘯き

そのことをどうにか治そうと考えることができなかったから


私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ

私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ


故にツルゲーネフが描きそうな恋物語が

私の身の上に起きる訳ない ありえない


自分自身に言い聞かせながら

自分自身を洗脳しながら

私は別の趣味 読書へと傾倒していった


特にソ連の若きパルチザンが

ドイツ兵を虐待する物語がお気に入りだった

ソ連の若きパルチザンに

自分の姿を投影して妄想が良く走ったものだ


ドイツ兵達は私の強さに屈し 強さを恐れ

私の遥か下の位置にいる者共だから

私のことを馬鹿にすることはできない

私のイチモツを笑うことはできない


私が絶対の強者なのだ

私が絶対の強者なのだ


そんな後ろ暗い気持ちのまま読書を進め

適当に読書の幅も広げていくようになると

次第にマルクスやエンゲルス レーニンの思想にも触れるようになった


ソ連の若きパルチザンが といった妄想物語は隠して

読書の経験を活かしてレーニン達の思想を

学校の壁新聞などでまとめたりすると

学校内外で私の評価が上がるようになった


大人達が私の研究成果を讃え

大人達が私の読書の経歴を讃えた


今にしてみるとその賛辞は偶然の産物で

妄想の先にある形なき副産物

築き上げたように見えても

全ては砂上の楼閣で

崩れ落ちるのが運命なのに


褒め讃えられる私こそが

本来あるべきものと思ってしまっていた

褒め讃えられる私の姿が

ずっとずっと続くものと思ってしまっていた


私は思春期に入ってすぐ

自分の体が何処かおかしいと

薄々感じるようになった末に


嗚呼 私のイチモツはダメだ

私は神に去勢されたのだ


私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ

私ハ去勢サレタカラ 異性トハ付キ合エナイ


そう思うようになった

そのコンプレックスから目を背けたままだったのに

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