第4話 Mortification Ⅱ -Classmates-

この世は絶望で彩られていた

私の世界は絶望で彩られていた


戦争の最中 私も皆も誰もが飢えていた

皆が皆 同じであった

戦争のことを 私も皆も誰もが恐れていた

皆が皆 同じであった


誰もが同じなのだから

力を合わせ この難局を乗り越えていこう

力を合わせ より良い未来を目指していこう


それが理想であると分かっているのに

それが叶えるべき事柄と分かっているのに


誰一人としてそのようなことをやろうとしない

飢えと死の恐怖によるストレスからか

自分より下を探し 作り 嘲笑う

弱者を見下し いじめる


上の者は下の者をいじめ 下の者はさらに下の者をいじめる

下の下の下の その最下層にいるのが私だった


普通の男子よりもなで肩だった私を

普通の男子よりも乳首の大きい私を

おかまと罵り 嗤い そしていじめた

普通の男子よりも目の悪い私を

普通の男子よりも背の低い私を

弱者と嗤い よってたかっていじめた


幼い私はあまりにも無力で

群がる悪意にどうしようもなく

耐えるだけだった

逃げるだけだった


俯き 人目を避けるようにしながら

学校と家の間を行き来し続ける

俯き 人目を避けるようにしながら

学校の中でなるべくその存在を消した


家に帰れば 帰ったで

何か失敗をして母から怒鳴られはしないかと

ずっとずっと怯え続けている


そうやって朝から晩まで 全てが屈辱に埋め尽くされていた


このような底辺で どうして私は生きているのだろう?

こんなクズとして どうして私は生まれたのだろう?


幼心なりに 私は本気でそう考えた

あの幼き日の鬱が頻繁に蘇る


過去でも最底辺 今でも最底辺

恐らく未来でも最底辺

家でも最底辺 学校でも最底辺

恐らく何処でも最底辺


絶え間なく続く屈辱は

私の希望を殺し続けていた

この心を破壊し続けていた


嗚呼  この世は絶望で彩られている

私の世界は絶望で彩られている


ずっと ずっと 何処までも

この屈辱感と共に

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