第42話 尾行
夜も更け他の魍魎たちもとっくに就寝しているというのに、緯澄は身体を横にしても眠ることが出来ず、気晴らしに外に出ようと起き上がった。
洞窟を出るとフクロウらしき鳥の鳴き声が遠くに聞こえるだけで、他に音や声は聞こえない。
夜風に当たりながら、そのまま獣道を下りて行く。
早朝、近重に清流の話を聞きに行ったが何の情報も得られなかった。
嘘をついているのか、それとも本当に何も知らないのか。緯澄には分からない。
だが、やはり何かが引っかかる。
(それとも、清流が何か隠しているのか)
そんなことを考えながら歩いていると、ちょうど獣道を下りて行く清流の姿を発見した。
これにはこちらも驚いた。慌てて脇の茂みに身を隠す。
清流は彼に気付くことなく山を下りて行く。
(清流? こんな真夜中にどこへ行くんだ?)
緯澄は茂みから出ると、気付かれないように距離を保ちつつ清流を尾行することにした。
彼が清流の後を付けていると、脇の茂みから出て来た者と目が合った。
「あれ? 緯澄さま?」
同じ魍魎仲間の二人組だ。
「お前たち、何してるんだ?」
緯澄が見ると、彼らの手には数匹の魚が。
それを見て二人が何をしようとしていたのかを察した。
「お前たち、この前も酒を飲んでいただろう? ほどほどにしろよ」
「いいじゃないですか。そんな固いこと言わずに」
「そうですよ。それにしても珍しいですね。緯澄さまがこんな夜中に散歩をしているなんて」
緯澄は内心ドキリとした。まさか、清流を尾行しているなんて言える訳がない。
「ああ。たまには夜風に当たろうかと思ってな」
「緯澄さま、それなら一緒に飲みましょう!」
「え? 私もか?」
「夜風に当たりながら上手い酒。これですよ! さあさあ、参りましょう」
まだ飲んでいないのにまるで酔っぱらっているような二人に肩に腕を回され、緯澄は今下りて来た道をまた戻る羽目になった。
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