今日のおもしろい夫 ~2019年1月編~

柳なつき

「あなたが暮らすとこの幸せは壊れる」

 お正月です。

 新婚ふたりで、だらだらしてます。


 なんかね、新年早々ふたりして「Subaracity」ってゲームにハマってしまった。スバラシティ、って読むらしい。ひたすらに街をつくって人口を増やしていく。

 というか、夫がスイッチでプレイしているのを見て、私もやりたくなってしまって借りた。するとおもしろいこと、おもしろいこと。普通にパズルゲーム? なんだけど、シンプルなルールとデザインでありながら妙に独特でこれがハマるハマる。


 気がつけば夢中でやってしまっていたのだけど、ふと隣からおなじ効果音とBGMが。なんと、スマホ版もあるとのことで、スイッチ版でプレイする私の隣で夫はスマホ版をプレイしはじめたのだ!!



 夫はね、ゲーマーさんなので。ゲームがなんでもとてもうまい。いや私が弱すぎるのかもしれないけれど。競いあうようにプレイをしてましたが、夫のが先に「スバラシティ」を達成させてましたよね……。



 で、このゲーム。

 百年の時が経過するたびに市長がひとり(!)増えるのだけど、なんとその市長を使うことによって(!!)、建物をひとつ消せるという謎ながらも重要なシステムがある。


 だもんで、その市長は犠牲になるのだよ……といった会話を新婚は始めた。

 言いだしっぺは、私のほう。ゲームはそのままお互い一生懸命プレイし続けている。街をつくっている。



「かわいそう……あれでしょ? 犠牲になりたくもないのに市の発展のために、って無理やり犠牲にされるんでしょ?」

「そうだよ。市長、すまないね、みんなのためなんだ、って言われるんだよ」

「それもぴっかり笑顔で、よかったねえなんとかくうん、きみは市の発展に貢献できるんだよお、とか言われるんでしょ……」

「そうだよ。きみの犠牲は忘れないからね、って言われる」

「それ完全に犠牲だって自覚してるやつ! そんでそんときにもにこやかなんだ……こわい……完全にこわい……ディストピアだ……」


 シティに住むひとたちはみんなにこやかで穏やかな顔をしている。

 またもや口を先に開いたのは、私。


「みんなこうやって笑ってるけどさ、市長を消費して街を発展させるような独裁者のもとでひとびとは幸せなのかな……」

「シアワセダヨ」


 唐突な機械音声!! うちの夫はたまに機械の物真似みたいにしゃべります。クオリティはめっちゃ高い。


「ほんとうに幸せだと思ってみんな暮らしているの??」

「ソウデスヨ。ヤリガイ。オダヤカ。ミンナシアワセ」

「みんなそう思い込まされているんじゃないの!?」

「ナンノコトダカワカリマセン」

「……その街に住めば幸せになれるんですか?」

「ハイ」

「じゃあ、だったら私を住ませてくださいよ市長!」



「だめ」



 唐突な人間バージョン低音ボイス!!



「えっ……なんで、えっ。だってそこに住めば幸せになれるんでしょ?? 住ませてよ、私もいっしょに住ませてよその幸せなシティに!」

「あなたが暮らすとこの幸せは壊れる」




 ……あ、夫も、そういうふうに私を見ているのかな? みたいな。

 こう、うん、そうだね。私はたぶんそのディストピアに住んだら、いろいろ革命を起こしたがると思うし……だからそういうふうに見られてるのかな?? みたいな。



 それにしたって、「あなたがこのディストピアに来ると暴れまわってみんなを正気に戻して幸せを壊しちゃうでしょ」みたいな雰囲気でそんなセリフを新年早々言われてしまうとはね、やはりうちの夫は、今年もとてもおもしろいんですよ、ええ、ええ!

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