第3話:メインプレイ:ミドル5

GM:単独行動に移った真白のシーンです。尾行中の守矢は、任意のタイミングまたはGMの指示で登場していただきます。


真白:シーンイン! (ころころ)6点上昇、53%!


GM:真白は誰にも行き先を告げず、一人で例の廃墟へとやって来た。

 真白の記憶にあるそれよりさらに風化した外観は、まるで他者の侵入を拒むかのような印象を与えてくる。

 こみ上げる懐かしさを胸に、廃墟の中を進む真白、そしてリビングへの扉を開いた、次の瞬間。


黒崎幸也(GM):「動くな」


GM:側頭部に突きつけられる、冷たい銃口の気配。だがそんなものは気にならない。

 真白の耳に飛び込んできたその声は、懐かしい“彼”のものに間違いなかった。


真白:「――私だよ、幸也……久しぶり」

黒崎幸也(GM):「なっ!? お前、まさか。嘘だろ……真白、なのか?」

真白:「他の誰に見えるんだ。まあ、連絡もしなかった私が悪いけど」


GM:銃口の気配が、静かに離れていく。そして真白が振り返った視線の先には――およそ一年ぶりに見る、かつての相棒の姿があった。


黒崎幸也(GM):「あ、ああそうだよな。久しぶりだな、真白――ん? 今も真白って名乗ってるのか?」

真白:「本当に久しぶりだ。当然だろ? 幸也がくれた名前なんだ。簡単に捨てられるかよ」

黒崎幸也(GM):「……やっぱり、今も『あや』って呼ばれるのは苦手なのか」

真白:「まあな。彩りなんて鮮やかな名前は、私には似合わない。まっさらな真白の方が私は好きだよ」

黒崎幸也(GM):「そっか……やべぇ。

 久しぶりで、嬉しすぎて何から話せばいいか、わっかんねぇや。ははっ」

 そう言って、以前と変わらぬ笑顔を向ける。

真白:それに、僅かな笑みを浮かべるよ。


守矢:真白が素のぶっきらぼうな言い方してるの、ぐっと来ませんか皆さん。

クラウ:わかりみが深い……。


黒崎幸也(GM):「ああ、まずはともかく無事で良かった……本当に良かった。

 諦めてたわけじゃねぇけど……心の何処かで、お前はもういなくなっちまったんじゃないか、なんて思ったこともあった」

真白:「……ごめん。新しい場所を見つけてな」

黒崎幸也(GM):「新しい場所か。そっか。上手くやってるようなら何よりだぜ」

真白:「……ああ。幸也にちょっと聞きたいことがあるんだ。

 Rメモリって言葉に、聞き覚えはあるか?」

黒崎幸也(GM):「――」 ピクリ

真白:「その様子だと、覚えがあるみたいだな」

黒崎幸也(GM):「ああ、知ってる。F都のヴィランの間じゃ、その噂で持ち切りだからな。

 ま、お前の情報能力なら当然知ってるだろうけど」

真白:「なるほどな。だが――悪いことは言わない。アレは手放した方がいいぞ」

黒崎幸也(GM):「そこまで知ってんのか。流石に耳が早いな」

真白:「アレは危険な代物だ。幸也、場合によっては――死ぬぞ」


 重い沈黙が、場に満ちる。


黒崎幸也(GM):「……随分とアレに詳しいんだな。新しい場所ってやつで仕入れた知識か?

 つーか今、どこで何してんだ?」

真白:「……今は、サツに身を置いてる。アレで破綻した連中も、多く見てきた」

黒崎幸也(GM):「――あん? サツっつったか今。聞き間違いか?」

真白:「聞き間違いじゃない。けどここには、真白として来たつもりだ。

 頼む、幸也。アレを手放してくれないか」

黒崎幸也(GM):「……悪いな。いくら真白の頼みでも、そいつは出来ない相談だ」

真白:「…………理由を、教えてくれ」

黒崎幸也(GM):「ああ、それは――」

 と、ここでピタリと口を止める。

「――待て。誰だ盗み聞きしてやがんのは。

 いるのはわかってんだ、姿を見せろ」

 守矢が潜む方向に銃口を向ける。

真白:「っ!?」

 咄嗟に銃を構えるよ。


守矢:シーンイン! (ころころ)1点上昇、51%!


守矢:「盗み聞きとは心外だネ。散歩中のナイスミドルだヨ」

 物陰から姿を現しましょう。

真白:「っ……守矢、さん」

 構えた銃をそっと下ろす。

黒崎幸也(GM):目つきが険しさを増していく。

「お前は、あん時のおっさん。たしかヒーローだったな。

 ……ああ、そうか。そういうことかよ、真白」

真白:「ま、待って、違――」

黒崎幸也(GM):「お前、完全にそっち側の人間になっちまったんだな。ここに来たのもヒーローを手引きするためか」

真白:「っ――」

 幸也に疑われたショックで、頭が真っ白になって沈黙してしまう。

守矢:「込み入った事情があるのはよーくわかった。こんなところで立ち話もなんだ、署でゆっくりお話を聞かせてもらおうかな?」

 こちらは表情を変えずに幸也を見据える。

黒崎幸也(GM):「ここでヒーローに捕まるわけにはいかねぇ。俺には俺の使命がある」

守矢:「それは市民を傷つけてまで成し遂げなければならないものかね?

 悪いことは言わない。今ならまだ罪は軽い」

黒崎幸也(GM):「この世界には、ヴィランとしてしか生きられねぇ奴らがいる。俺はそいつらを集めて力を見せつけ、世界にヴィランを認めさせる。

 もう、真白や俺みたいな人間が苦しまなくていい世界を作るんだ。だからRメモリは手放せない。ヒーローアンタに負けるわけにもいかない」

真白:「っ!」

 その言葉に、顔を歪める。

守矢:「驕りだヨ。そんなものに頼って歪められる人の気持ちもわからない人間に、変えられる世界なんてない」

黒崎幸也(GM):「言ってろよ。誰が何と言おうと俺はやり遂げてみせる。だから、真白」

 手に閃光弾を錬成し振りかぶる。

「――じゃあな」

守矢:「くっ、待ちたまえ!」

真白:「幸也、待っ――」


GM:悲しげに告げると幸也は閃光弾を爆発させる。真白が伸ばした手は、彼には届かなかった。《瞬間退場》です。


守矢:「……はぁ。また捜査のやり直しかな、これは。

 さて真白くん。なんとなくの事情は察するが……君の口から話してはくれないか」

真白:そっと手を下ろして、一瞬瞑目した後。

「……はい。ですが、ここは”彼ら”の隠れ家です……場所を移しましょう」

守矢:「ありがとう。では落ち着けるところで話を聞こうか」

真白:「…………はい」

 ここで幸也のロイスをタイタス化します。

 今まで罪悪感はあったけど仲間だった。でも、その仲間だった彼のことを話す――裏切ることを決めたから。


(ごめん、幸也。それでも私は――)


 立ち去る直前、これが最後とばかりに廃墟のリビングを振り返る。

 微かな明かりだけが照らすその暗い部屋を、彼女だけが眩しそうに、痛みを堪えるように、目を細め見つめていた。

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