第1話:メインプレイ:ミドル7-2

 なんということだろう、千両役者ロジカの命運もついにここまでか。そう思われた、まさにその時。

 コツ、コツ――何者かが、取調室の窓を叩く音が響く。


一同:「ん?」


GM:窓際には一羽の小鳥が止まり、中に入りたそうに窓を小突いている。

 先ほど飛び去った、フィリップの《ハンドリング》だ。


クラウ:「……む、あやつは」

ロボ子:「あ、さっきの小鳥」


GM:そして、その小鳥の足には……なんと、十字架を模したアクセサリーが。

 この場の全員が、ひと目でそのアクセサリーの正体に思い至る。


フィリップ(GM):「やあロジカ。君の忘れ物を届けに来たよ」

クラウ:「……ロジカとやら。あの小鳥はそなたの使い魔か何かか?」

ロジカ:「いかにも。ああ、ご苦労だったな」

(フィリップ~! 私は信じてたぞ~!)


GM:取調室に招き入れられた小鳥が、ロジカの手元に届けた十字架。それは、斜めに傷の入ったヒーローズクロスだった。

 そしてロジカは、その傷跡に見覚えがある。

 忘れもしない。これは、ロジカに探偵のイロハを叩き込んだ偉大な“彼”が所持していた物だ。


ロジカ:「師匠……また、助けられてしまったな……」

フィリップ(GM):「はじめまして、《ハンドリング》で失礼。

 僕の名はフィリップ。エージェント・ロジカの相棒です」

ロジカ:「さて、諸君。これで疑う余地はなくなったと思うが?」 キ メ 顔

真白:(……疑う余地がない……本当に? 大使館に裏を取ることも進言しないとか)

クラウ:「……なるほど。そなたがヒーローであることは、とりあえず信じよう。

 ところでロジカとやら。あの怪人は、元は野良猫という話だったな?」

ロボ子:「ブン太、って呼んでたね」

クラウ:「ならば、この顔に見覚えはあるか」

 懐からDr.マギウスの手配写真を取り出し、ロジカに見せる。


ロジカ:GM、見覚えは?

GM:ありますね。路地裏で遭遇した憎きあんちくしょうの顔です。


ロジカ:「ああ、知っている」

 路地裏での出来事をかくかくしかじか説明しよう。

フィリップ(GM):(そうか、やはり奴はヴィランだったのか)

クラウ:「ふむ、やはりか。もうひとつ。そなた、腕に覚えは?」

ロジカ:「先ほどの戦いぶりを返答としよう。言葉で語るのは無粋の極みだ。ふっ……」

クラウ:「では、余から皆に提案だ。ロジカとやら、我々に力を貸す気はないか?」

真白:「!? 待って下さい、何を言ってるんです」

守矢:「え、この子を捜査に加えるの? おじさんちょっと躊躇しちゃうんだけど」

クラウ:「あの怪人は、Dr.マギウスと関連があり、連続殺人の容疑者だ」

ロボ子:「僕たちも、あのヴィランを追ってる。君たちの協力があれば、きっと……いや、絶対」

クラウ:「うむ! この事件も解決できるであろう!」

ロジカ:「ふむ……」

(な、なんだって~!?)

目暮警部(GM):「なんとまあ……最近の若者は発想が柔軟だな……」

ロジカ:「……ふふっ、いいとも。それがNoblesse oblige――貴族の義務だ」

(連続殺人……ますます見過ごせなくなったじゃないか!)

真白:「待って下さい! 素性が不確か過ぎ――」

フィリップ(GM):「いいでしょう。僕たちも戦列に加わろうじゃありませんか。構わないかい、ロジカ」

 真白の言葉を遮り、強引に話を進めよう。

ロジカ:「ああ、いいとも。決まりだな」

守矢:「えーマジぃ? チョベリバ(超ベリーバッド)ってやつだと思うんだけど……」

真白:「マジかよ……(ところでチョベリバってなんだろう)」 ぼそり

ロボ子:「レネゲイド事件に、国も血も有機無機も関係ない。

 今が、ヒーローになる時なんだ」

クラウ:「であるな。

 正直、貴族だの極秘任務だのは眉唾ものだが、こやつが強力なオーヴァードであり、なおかつ手を貸す気があるなら、手を組まぬ理由もない。であろう?」

目暮警部(GM):「……わかりました。いいでしょう、責任は私が取る。今は戦力がほしい」

守矢:「……確かに、既に何人もの命が奪われている。猫の手も借りたいのは事実。仕方ないネ」

クラウ:「話はまとまったな。ではロジカ・ミリターレとフィリップよ。余はクラウ・ネロマニクスである。

 一時の共同戦線かもしれぬが、よろしく頼むぞ」

フィリップ(GM):「ええ、こちらこそ」

ロジカ:「こちらこそ、よろしく」

 キメ顔で手を差し出す。


一同:あっ……。


クラウ:「ぁ……す、すまぬ。握手は苦手……なのだ」

 突然、怯えたような表情になるね。


 キャラ紹介にもあるように、クラウは過去のトラウマのせいで他人に直接触れられないのである。


ロジカ:「……? そうか、わかった。無理にとは言わないさ」

目暮警部(GM):「改めて、F都警察署の目暮です。皆も自己紹介を」

ロボ子:「ROBOT-5。ロボ子だよ」

守矢:「守矢裕一だ。私からも協力をお願いするヨ」

真白:大きくため息を吐いて。

「裏は取らせてもらいますからね……幸坂真白です。一時的でしょうが、よろしくです」

ロジカ:「うむ」

(乗り切った! 乗り切ったぞ私! 凄いぞ私!)

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