第92話 カクヨム・マラソン 第3弾 次のエピソードを書きました。

『義眼堂 あなたの世界の半分をいただきます』の次のエピソードを書きました。

後で投稿します。


この後、男が施術を受けて、びっくりするようなオチがあって終わります。

びっくりするようなオチはこれから考えます。オチはここには書かずに『義眼堂 あなたの世界の半分をいただきます』のところに投稿するつもりです。 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888271956


長編を書く時もこんな感じで思いついたシーンを書いてつないでいってます。なので早い段階でラストのオチを書くこともあれば、オチが思いつかないで最後の最後で書くこともあります。


■身体の中を泳ぐ魚を見る目

「少し引いちゃいました?」

 「どんな問題の回答でもわかる目を持った男の話」を終えた紅蓮は悪戯っぽく笑った。少しじゃなくてかなり引いた。私が見たブログの主がそんなことになっていたなんて知っていたら、ここには来なかった。今からでも遅くない。止めた方がいいかもしれない。

「お帰りになりますか? いいですけど、うまくいった話もあるんですよ」

 紅蓮はそう言うと、私の返事を待たずに勝手に話し始めた。


 その人の願いは別れた恋人を見つけることだったんです。施術の結果、その人は人の中を泳ぐ魚を見ることができるようになりました。人それぞれ違う魚が身体の中を泳いでいるんです。魂のようなものですね。人の容姿は変わりますが、魚の姿は変わりません。傷ついたりはしますけどね。

 恋人の魚は赤い模様についた白いアロワナでした。

「赤い模様の入った白いアロワナなんて見間違えようがないから、君の恋人がどんな姿をしていても魚を見ればすぐにわかる」

 先生はそうおっしゃいました。

「背びれやおびれはぼろぼろになっている。君との別れで傷ついたせいだろう。残念ながらそれは生涯直らない。君も同じように傷ついている。互いの傷を癒やしながら生きるんだ」

 先生にそう言われて、その人は恋人を探す旅に出ました。

 それからどうしたって? もちろん、恋人は見つかりました。すごい偶然ですけど、水族館でばったり見つけたんです。それからふたりは幸福に暮らしました。いいお話でしょう?


 紅蓮はそう言うとにっこり微笑んだ。しかし、さっきの話を聞いた後では素直に受け取れない。

「ほんとになにも悪いことはなかったんですか?」

 私が訊ねると、紅蓮は一瞬天井を見上げた。やっぱり、なにかある。

「その人は魚を食べられなくなっちゃったんです。たくさんの魚を見過ぎたせいでしょうね。でも、恋人と一緒に暮らせるなら、魚を食べられないくらいいいじゃないですか」

 考えようによっては、そうかもしれない。いずれにしても、なにか副作用が出るということだ。さっきほど不安ではなくなったが、まだ怖い。

「お待たせしました」

 低く太い声が響き、どこからともなく黒いスーツの中年男が紅蓮の横に立っていた。でかい。180センチくらいありそうだ。映画に出てくるイギリスの伯爵家に使える執事みたいだ。

「お客様の義眼の用意ができました」

 そう言うと右手を私の前に突き出した。人差し指と親指で宝石のような球体をつまんでいる。これが、私の義眼なのか? まるで装飾品のように輝いている。

「先生!」

 紅蓮が男を軽く蹴る。

「これは失敬。私は千瞳悼水せんどう いたみ。義眼堂の主人あるじです」

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