第102話 接近
親愛なる栗山Rui様
来たる7月7日の前日となりましたので
ご連絡を差し上げました
あれからいかがお過ごしでしょうか
こちらは準備が整いました
我ながらなかなかの仕上がりだと
自負しております
しかし、あまり人目のつく場所で
お会いするのは少々危険かと思い
こちらでふさわしい場所を
ご用意致しました
つい最近出来た異世界次元ビルを
ご存じでしょうか
あの場所を希望致します
Rui様には今回特別B15エリアへ
ご案内致しましょう
時間ですが
7月7日地球時間でいう19時ちょうどに
まさにぴったりの時間に
B1エリアのエレベーター付近で
お待ちください
ちょうどになりましたら
お迎えにあがります
それでは恩人であるRui様にお逢いするのを
とてもとても楽しみにしております
ついに連絡が来た
準備が整ったらしい
異世界次元ビル
あそこは建設中にもトラブルがあったし
いろいろと良くない噂もあったりと
話題になっていたビルだから知っている
あそこに行くのははじめてだ
一応商業ビルとはなっているが
建物自体が暗く
あまり良いイメージがないせいか
テナントがほとんど入っておらず
地下1階から50階まであるが
ガラガラ状態だという
都内のど真ん中にそびえ建つビルを
維持するのに
相当なお金がかかっているはずだが
ガラガラ状態でも特に問題なく
経営が続いている謎のビルだ
あのビルと彼らの繫がりは
なんなんだろうか
やはり彼らが
ダークサイドの人間ということを
改めて思い知る
B15エリア
そんな場所が存在するなんてはじめて聞いた
この世界の人間は入ることができないエリア
エレベーターもB1までとなっている
俺は本当にこのまま彼らに
会っていいのだろうか
今さらだが
良くないということは分かっている
が、母さんを蘇らせてくれるんだ
断る理由はない
母さんが亡くなって、早1年が経つ
もう一生会えないと思っていたから
不思議な気分だ
本当にあの母親なんだろうか
母親によく似た人間ということは
ないんだろうか
怪しい
怪しいが
蘇ると言ってるんだ
今はそれを信じるしかない
明日の7月7日19時
異次元世界ビルの
B1エレベーター付近におります
「Rui様から連絡が来ました」
「そうか」
「いよいよですね
ワクワクとソワソワとドキドキです」
「訳の分からない」
「いや、何でしょう
Rui様は何といいますか
カリスマ性があるといいますか
何といいますか」
「確かに彼には
ずば抜けた頭脳と
キラキラしたものを感じるからな」
「キラキラですか?
我々にはないものですね」
「そうだな
彼は不思議なもんで
陰と陽をバランス良く持ち合わせている」
「なるほど」
「頭で理解すれば必ず
こちら側に転がるはずだ」
「母親の件もありますしね」
カチカチ
7月7日、時刻18時55分
ここが異次元世界ビルか
写真で見ても思っていたが
このビルだけ妙に暗い
わざわざここに買い物に来る人は
いるんだろうか
働いてる人もたんたんと流れるように
作業をしている感じで
感情を感じられないというか
とにかく妙だ
それに話し声も聞こえるが
声というよりも
音、雑音というか
でも決してうるさいわけではなく
耳を通りすぎる感じで
とにかく不思議な空間だ、ここは
18時59分
あと1分
一体どんな姿で来るんだ
人間の姿ではあると思うが
準備するぐらいだ
多少の違いはあるのだろう
そろそろ時間だ
five
four
three
(ゴク)
two
(ドキンドキン)
one
チーン
(エレベーターの音)
うわっ、何だすごい光
「Rui様、お待ちしておりました」
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