第50話 日常

Rito


久しぶりにFumiyaと外出


二人で出掛けたのはいつ振りだろう


俺の記憶の中にはない


今どこに向かってるかというと


そう、母親がいる施設


母親が施設に入って一か月


会うのも一か月振りだ





Rito「すみません、葉山です」


施設「面会の方ですか?


葉山Kazumiさんの」


Rito「はい、そうです」


施設「失礼ですが、どのようなご関係」


Rito「息子です」


施設「そうですよね、すみません


規則で聞くように言われていて


少しお待ちくださいね


その間に面会者の欄に記入をお願いします」





面会者


12月5日 11時17分

葉山Rito、Fumiya





施設「葉山さんちょうど


2階のミーティングルームに


いらっしゃいますのでそちらへどうぞ」


Rito「はい」





更生施設


当たり前だけど、はじめて来た


施設内は想像していたより綺麗だった


きっと父さんがお金をかけて


綺麗なところを選んだのだろう





Rito「母さん離婚のこと同意してるのかな」


Fumiya「とりあえず今日は


その話はなしで」


Rito「そうだな」





いた


久しぶりに会う母親


以前より痩せていて顔色もあまり良くない


改めて病気だということを思い知らされる





母親「Rito、Fumiya」


Rito「久しぶり」


母親「来てくれたの、Fumiyaも」


Fumiya「あぁ」


母親「ごめんね、色々と大変でしょ」


Rito「大丈夫だよ」


母親「普段どうしてるの?


ご飯とか、洗濯とか掃除とか」


Rito「ご飯は適当に作る日もあれば


大体は弁当買ってくるか


週末は外食が多いよ」


母親「作るって、どっちが作るの?」


Rito「俺が多いかな」


母親「Ritoが?考えられない


何を作るの?」





以前の母親ではないが


楽しそうに笑っている


母親と笑いながら話すのはいつ振りだろうか





Rito「卵焼きとか


目玉焼きとかゆで卵とか」


母親「卵料理じゃない、全部」


Rito「あとウインナー茹でたり、炒めたり」


母親「そう、Fumiya、元気?」


Fumiya「元気だよ」


母親「そう、良かった」





Reila


久しぶりに平和な日常


おばぁちゃんと生活するようになって


1週間が経った


入院する前はおばぁちゃんとの生活が


永遠と思っていたし


当たり前と思っていたけれど


入院して改めて有り難みを痛感する


入院中に家のことできるようになって


良かった


おばぁちゃんに負担をかけたくない





ドンドン


Reila「おばぁちゃん来たかも」


おばぁちゃん「そうみたいだね」


今日はお父さんが昔付き合っていた


東京の自宅に住んでるおばさんが


家に来る予定だった


加山Norikoさんていうらしい





ガラガラ


加山さん「こんにちは」


Reila「わざわざありがとうございます」


加山さん「いえ、こちらこそ


呼んでくださってありがとうございます


お邪魔します」


おばぁちゃん「Norikoちゃん


よく来たわね」


加山さん「呼んでくださって


ありがとうございます


足のお加減いかがですか?」


おばぁちゃん「だいぶいいよ


この年で骨折すると大変なのよ」





Reila「加山さん


お茶か紅茶どちらにされます?」


加山さん「じゃあ、紅茶で


そうだ、これ退院祝いです」


おばぁちゃん「わざわざいいのに」





加山さん「いえ、お家も貸していただいて


家賃もお支払いしていませんし」


おばぁちゃん「あの家は何度も言うけど


Norikoちゃんに譲ったんだよ」


加山さん「でも.....」


おばぁちゃん「いいの


せめてもの罪滅ぼし」


加山さん「そんな罪滅ぼしだなんて


私の問題ですから」


おばぁちゃん「あなたには


何の問題もなかった」


加山さん「おばさん.....」





Seia


Seia「田中さん」


田中さん「何?」


Seia「おはよう」


田中さん「おはよう」





あのあとSayakaちゃんからは 


メールは返ってこなかった

 

当たり前だ、約束を断ったんだから


終わってしまった


いや、終わらせてしまったんだ


後悔してないというと、嘘になる


田中さんとSayakaちゃんタイプが全然違う


そして目の前には強気な田中さん





ガタ

(椅子に座る)


ガタッ

(田中さんが立ち上がる)


トントントン

(机を田中さんがノックする音)





Seia「えっ」


田中さん「ちょっと、挨拶だけ?」


Seia「へっ」


田中さん「何か気の利いた会話できないの」


Seia「だって田中さん


怒ってるみたいだったから」


田中さん「怒ってたら終わりなの?」


Seia「怒ってるのに


話しかけても嫌だろうし」


田中さん「あんたさ


自分の意思ってないの?」





俺の意思?


考えたこともなかった


そもそもこんなにはっきりと物を言う


人種に出会ったことがない


田中さん「もういい」


やっぱり田中さんを怒らせちゃった





Miku


4次元世界からまた戻ってきた


一週間この世界にはいなかったけど

 

Kailの言った通り


また違和感なく生活がはじまった


Kailとは最後まで名乗らなかったけど


あの時、山口Hayatoの中にいたのは


Kailだったと思う


久しぶりにパソコンルームに行く


もうここには近づかない方がいいかな





ドキン


山口Hayato.....先輩だ


あの日以来だ


彼はきっと体を貸していただけで


記憶にはないだろう


チラッ


ニコッ


えっ、私のこと認識して....る?


ガタッ


こっち来た





Hayato「雨宮さん、ちょっといい?」


Miku「えっ」


やっぱり私のこと認識してる


Hayato「久しぶりだね」


Miku「えっ、はい」


Miku「先輩


私のこと知ってるんですか?」


Hayato「もちろん」


Miku「3日前にはじめて話したじゃん」





えっ、3日前は私は4次元世界にいた


ということはこの一週間


別の私がこの世界にいたってこと?


Kailが司令センターが


進めてくれたのかな


違和感なく生活できるように





Miku「あぁ、そうでしたよね」


Hayato「で、映画いつ行く?」


Miku「へっ?」







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