第34話 俺は疲れていないって言う奴
本部のある部長の話。
社員の部長から役員に昇格してやる気マンマン。
同族企業の中で他人が役員になるのはオーナー一族からよほど信頼されているようだ。
部長が役員になってから、店長や副店長などの管理職に対する研修会が増えた。研修会といってもほとんどが取引先のメーカーなどに金を出さして講師を呼んできたりしてのこと。
研修会の昼飯もメーカー持ち。
そこそこいいランチメニューに店長たちも喜んでいたりもするが。
そのおかげで、研修会のスポンサーになっているメーカーの商品の販売ノルマが前年対比で倍以上になったり。
あるメーカーのセールスがお店に来て「◎◎部長さんにはかなりお金を使わせて貰ってますから、販売の方は目標額の達成をなんとかお願いしたいですね!」などと皮肉混じりに言ってきたりも。
研修会の費用以外に、部長がメーカーのセールスを呼び出して呑み歩きしているって噂も耳にする。
オーナー一族からは、社員への教育熱心な部長だと思われているらしい。
部長を交えての管理職ミーティングでは、部長が読んだ自己啓発本の内容を聞かされることも多い。読んだ本によって以前と真逆な考えだったりして、どうしたいのか分からない。
お店から本部の部長に用事があり電話したとき、「○○店の⚫⚫です。お疲れさまです」と言った瞬間に「おい!俺は疲れていない!今度から俺の前では お疲れさまですとは言うな!」と怒鳴られた。
「お疲れさまです」ってのは仕事上の慣習みたいな言葉で、上司や取引先などに挨拶のように日常語として使ってる言葉なんだけど。
つい最近までその部長も部下に「お疲れさまです」と言われても普通に「はい御苦労さん、お疲れ」と返答していたじゃないの!!!
また新しい自己啓発本で、訳のわからぬ屁理屈を身に付けたようだ。
こまったものだわよ!!!
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