第33話 ベンツのオバハン
ベンツに乗っている人は治外法権だ。
お客でもないのにお店の駐車場に何時間も停めていてもお店の人も文句を言いにくい。
警察から委託された路上駐車を取り締まる人々もベンツにはチェックを入れない。
明らかに駐車違反のベンツにもパトカーは通りすぎる。
あるお店の近くに小料理屋があった。
年に何度とその小料理屋で地元を縄張りにする組織が会合を開く。その日はお店の駐車場のほとんどのスペースにベンツが停められている。お客でもないが小料理屋での会合に参加する組織の人々が延々と停めている。
文句など言おうにも我が身の安全を優先してそのまま静観するしかない。
小料理屋のオヤジや従業員もお店に買い物に来るが、知らんぷり。
また別のお店では、向かいの美容院を利用するオバハンがお店の駐車場にベンツを停めて行く。
商店街の中で通行人や車の往来も激しいので駐車場にはガードマンを配置している。ガードマンはお客の車や納品のトラックの誘導や通行人の安全を見守っている。お店で買い物する訳でもなく、オバハンがベンツを停めてさっさと向かいの美容院に入って行ってもガードマンは黙認。
軽自動車とか一般的な乗用車の人がお店の駐車場に停めて、お店にも入らず何処かへ行こうとすると「もしもし、うちのお店でのお買い物の方以外は駐車をご遠慮していただいておりますが」などと呼び止めるのが普通だが、オバハンはベンツだから治外法権なのだろう。
ある日、お店の駐車場が満車の時間にベンツのオバハンがやって来た。いつものように美容院に行くためだ。
駐車場をつかえないオバハンは美容院のドアの前にベンツを停めて入った。
車の往来や通行人の多い商店街のさほど広くもない道幅の道路にオバハンはベンツを路駐。おかげて渋滞が起こったり、お店の納品のトラックが搬入口に入り難かったり。
パトカーが美容院の前を通りすぎたが、オバハンのベンツを見て見ぬふり。
お店のピークの時間が過ぎ、駐車場が空いた。
その瞬間に、頭に大量のロッドを巻き付け、首から下には美容院の大きなエプロンをぶら下げたままのオバハンがベンツをお店の駐車場に入れに来た。
そして、何食わぬ顔で美容院に戻って行った。
もちろんガードマンは注意することもなく黙認。
オバハンの雰囲気からして下手に注意でもしたら、知らぬまに暗殺されそうだから。
ベンツは治外法権なのよ!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます