私の夢見た日常は何処へ!?

桝屋千夏

第1話 「こんなところにも、美しい百合の花が咲いていたんだね……!!」

 編入二日目。

 私は自らの意思で不登校になった。

 いじめられたとか、雰囲気に馴染めないとかじゃない。


 理由ははっきりしている。


 私はあの学校が嫌だ!



 ******



「こんにちは!私、桝屋千夏と言います」


 今日、この私立『サイバージャパンハイスクール』に編入してきた二年生。


 少し変わった学校だって聞いたんだけど……まぁ第一印象は普通のどこにでもあるような学校かな?

 そもそも名前が……ね。


 自己紹介を手短に済ませ、自分の席に座る。

 私の席は、教室の真ん中から窓側のやや後方の席。


「では、一時間目を始めるぞー」


 あれ?

 椅子を引こうとしたのに動かない。

 机も動かなくて、がっちり床に固定されてる。

 なんだ、これ?


「一時間目……道徳。みんな、モニターに注目」


 すると教卓の上の天井が開きモニターが降りてきた。

 映し出されたのは、この学校の校舎。

 学校の歴史でもするのかな?

 そんなことするなんて、活かした名前の高校なのに、学風はしっかりしてるんだな。


 と、その瞬間!

 信じられないことが起こった。

 先生も生徒も机にしがみつきはじめたと思うと、ゴゴゴゴゴッッっと地響きが鳴り、教室が右に左に揺れ始める。


 見よう見真似で私も机にしがみついてたら、外の景色がだんだん変わってきた。

 変わってきた……というより周りの建物がだんだん小さくなっていく。

 ふとモニターを見て私は驚愕する。

 さっきまで映し出されていた校舎の姿はそこにはなく、目に映ったのは……






 ……ロボ?


 みるみるうちに姿が変わっていく。

 どう表現したらいいのかわからないけど、ガッシャンガッシャン、ウィーンウィーンってなってて、とりあえず戦隊ものの合体みたいにどんどん変形していく。


 訳がわからないまま、私は目を閉じ必死で机にしがみついていた。



 ガシャンッッ ドゴーーン



 ガッシャンッッ ドゴーーン



 多分歩いてる?これ。

 全然状況わからないけど、多分歩いてる。

 その度に教室がグラグラ揺れ、鞄の中身やら掃除用具やら、いじめられてるんだろうなって生徒の机にあった手作りの遺影があっちこちに散乱している。


「みてみろ!」


 先生が教卓にしがみつきながら外の方を指差す。

 先生の指差す校庭の隅っこの方を見ようと、女子生徒が身を乗り出す。


「うわー!みえる!」


「すごーい、キレイ!」


 女子生徒達の黄色い歓声が響く。

 そんな中、隣の席の女子がポツリと呟いた。


「こんなところにも、美しい百合の花が咲いていたんだね……!!」(※課題セリフ1)


 どーでもよくね?この状況で!

 理科のフィールドワークとかならわかるけど、今さ、それどころじゃないじゃん!

 教室めっちゃ揺れてるし、尋常じゃないでしょ、この状況!


 え?もしかしてこれが普通なの?

 しっかし、よく見えたな!

 こっからみても百合なんてどこにあるか全然わかんねぇーわ!

 あ、もしかして女子がキャーキャーしてるってのが百合ってことじゃないですよね?

 それならわかりにくいわ!


 右に左に面白いように揺れる教室。

 しっかりと机にしがみつかないと振り回されて飛ばされそう。

 もし、運悪く窓の方に飛ばされたらガラス割れて教室の中から飛び出しちゃう。


 教室……て言うより校舎ロボ?

 この状況で校舎ロボの体内から排出されたら100%死ぬよね!ね!



 ズバゴーーッッンツツ



 そんなこと考えてたら凄まじい衝撃音。

 と、共にガゴンガゴンとすごい縦揺れ。


 やってしまった……。

 変なことを考えてたから、私はその衝撃に耐えきれず、そのまま窓の方に吹っ飛ばされた……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る