第143話 デデンデンデデン?
機械…生命体? デデンデンデデン! こりゃシュワちゃんでござる。
「二人ともー、お昼買ってきたわよー」
「取り敢えず昼飯にありつこうぜ」
「ウィ」
母上はリエッセさんが我が家に引っ越してきてから何故か動くようになったでござる。今の今まで漬け物石のごとく動かなかった
「お義母さん、午後は二人で出掛けてきます」
「ラブホでも行くの? 夢有羅布楽雅の割引券なら余ってるけど」
「ぶっ、げほごほ!!」
ら、らぶ?! 割引券?!
「いえ、研究所です」
「研究所?」
「車作ってる方の技研って言ったら知ってます?」
「ああ~、知ってるけどあれは車のメーカーじゃなかったかしら。あとなんか電子ネットワーク系の研究してるとか」
「表向きはそうです」
「裏向きは?」
「"ウチら"の兵器開発やってます」
ウチらのってことはロイヤルセブンか武蔵野絡みでござるか。技研って言ったら民間の研究所としては世界でも5本指に入る化け物で、超のつくエリートばかりっていう凄いところでござる。
「へぇ~」
「タケにもまだ話してないし見せてなくて、興味があるみたいなんで」
「いいなー、お義母さんも行きたーい」
「すんません、こればっかりはちょっと…」
「タケちゃんお土産よろしく~」
「そんなのないでござる。じゃあ車の鍵取ってくるでござる」
ここからは遠いし行ったことないから車でござる。電車の駅からは離れてるしバスも通ってないでござる。
「それはいい。裏の勝手口は秘匿案件でな、電話して迎えをもらうことになってる」
午後、リエッセさんがどこかに電話するとリムジンが迎えに来て窓をカーテンで塞がれて連れてかれたでござる。リムジンって部屋が丸ごと移動してるみたいでどうも慣れない。
「到着いたしました」
「うっし、行くか」
「行くかって…」
普通の研究所で正面から入ってるように見えるでござる。ホームページで何度か見たことある写真にそっくり。これのどこが裏の勝手口でござる?
「や、リエッセちゃん久しぶり。大変だったね」
「おいっすー。呈一さんも大変そうだな、クマが」
「ははは、なかなかやらなくてはならないことも研究自体も山積みでね。そちらの少年が?」
「ああ、アタシの旦那で八人目だよ」
「戦野武将でござる」
「森亜呈一です。この技研の副所長兼プロジェクトリーダーだ。じゃ早速ご案内しよう」
目の下が獰猛なクマに取り憑かれたお方と握手して、案内された扉は建物を入ってすぐ入りくんだ通路を通り五重のセキュリティをクリアしてようやくたどり着いたでござる。
「ここから先は国家機密だからお家に帰っても喋っちゃダメだよ? 僕らやロイヤルセブンの中でなら構わないけどね」
最後に森亜さんの生体認証を行い、長い螺旋階段をひたすら降りていく。
「ここ地下何mでござる?」
「残念ながらそれは教えられないなあ」
「…この螺旋階段の意味は?」
「それも教えられないなあ」
方向感覚狂わせるためでござる。窓がない蛍光灯しか明かりのない、打ちっぱなしのコンクリートの壁しか続かない、薄暗くて狭い螺旋階段をひたすら歩かせることによって位置の特定を防いでいるでござる。
「アタシは一回だけ10cmヒールで歩数カウントしたことあるわ」
「ヤメタマエ」
ようやく降りきると真っ白い壁で行き止まりでござる。
「タナトス、お客さんだよー。キミが楽しみにしてた八人目の少年だ」
森亜さんが声を掛けると、白い壁だと思っていたそれは透明になって消え奥へとつながったでござる。入ると大きい大きいドーム状の部屋。
「いらっしゃい! この時を待ってたわ! ようやく会えるのね!」
女の子の声?
何県何市にあるかも分からないとある技研の裏の勝手口。スーさんは鍛冶職人で、その工房があるという。しかし案内された地下のドーム状の部屋にはビーストウォーズメタルスな少女がおったとさ。いや、人の形をしてるあたりレプリ口イドの方が似てるでござる? めっちゃテカテカのピッカピカだけども。
(なんという鏡面加工…。つるっつるのてっかてかでござる)
「紹介しょう。この技研の
「こんにちは。前職は死神で、今はここで皆のサポートしてまーす」
「し、死神っ?!」
思わず、ずざざっと後退りしてしまう。だって死神って言えば取り憑かれたら最後、あの世に連れてかれちゃうあの死神でござる。ドワーフ的な人が大きい炉でハンマー叩いてるっていうイメージだったけどまるで違うのが出てきた…。しかも女の子。機械生命体ってこういうことでござるか。
「んなビビんなよ。ま、一般的な工房とはかけ離れてるしな。隣に演習場もあるし。今じゃスカイと組んでたりここの研究手伝ったりしてるだけだって」
驚くところはそこじゃない件について。この工房もおかしいけど目の前にいるメタル少女がなんともまあ。ほとんど人型だから一瞬レプリロイドかと思ったけどそれは外見だけのメタルスでござる。
「ま、前職が前職だけに危なっかしいものばっかりしか作れないんだけどね。先日盗難にあった新型のパワードスーツタイプの戦闘機。アレも【タナトス】って言ってね、デザインと設計、部品調達はスカイ君と技研が担当して、基礎開発と組み上げや調整は彼女にやってもらったんだよ。そんなこんなで由来なんだよね」
「へ、へぇー」
去年の秋に聖地巡礼して翌年正月明けに初陣してと、それからの流れもなんかこう…。吾輩、未知との遭遇多すぎない?
「僕らのプロジェクトは彼女からデータ取りとか技術の転用や流用でまた新しい技術を開発しているんだ。でその新しい技術でまた新しいものを作ると」
「お前ゲーム好きだよな?」
「え? ええまあ」
突然話が変わって生返事。吾が輩が華麗なるニート生活を送っていた頃は昼間は取引、夜中はゲーム三昧だったでござる。アクション、シミュレーション、RPG、TPS、FPS、MMO。面白そうと思ったソフトにはジャンル問わず片っ端から手を付けてたでござる。
「アニメでやってたフルダイブゲームを近いうちにここが出すつったらどうする?」
「
「アホたれ」
ごちっ
「あいてっ」
「ははは、そういうお年頃らしくていいじゃないか。楽しみに待っていて欲しいんだが残念、ログイン時間にはセーフティを設けていてね。連続ログインは最長でも72時間だ」
「なんと」
「もちろん真夏や真冬に室内環境が整っていない場合、身体に影響が出そうになったもしくは危害が与えられた場合、不正に操作をしたりされたりした場合、強制ログアウトさせられるからそのつもりで」
「で、兵器開発とそれとどう繋がるのか全然分からないでござる」
「共通点はイメージだよ」
「簡単に言うとね、拳銃なんかは『中身がどうなってるのか全く見当もつかないけど取り敢えず引き金を引けばぶっ放せる銃火器』をイメージしているのよ」
「? ? ?」
「要はイメージの具現化だよ。四神剣も仮想化し、クラウド上に保存した上で手元に出てくるイメージをすると瞬間的に召喚することが出来るんだよ。フルダイブMMOもこんな感じだったいいなーっていうイメージ。基礎になるデータはあるけど細かいところはプレイヤーの想像次第なのさ」
「例えば拳銃なんかだと、現実世界にあるものだから部品や設計図を読み込んでしまえばなんとなく想像するだけで手元に召喚出来るの。個体名が分かるとより正確になるわね」
「…なんでゲームなんか作るでござる? ここ兵器開発でそ?」
「予算削られたから大儲けしないとお金が無い」
切実ゥ!
「アタシはこういう性格だから具体的なイメージってのが苦手でな。細かい設計には細かいイメージが必要だ。頭ん中で図面に線を引かなきゃならん」
「それが一番の得意だったのがスカイ君だったんだね。ぶっちゃけ僕ら技研は詰めの修正と印刷してるだけみたいなもんだし」
「? ? ?」
「最初から何でも出来る人に言っても難しいかな?」
「そういやお前いきなり青龍を直接召喚してたってな。繋がりが強いと出来るみたいだがまさか…、ヤったのか?」
「とんでもない! 童貞でござる!! 童貞でござる!!」
童貞でござる!! 大事なことだから三回言いました!
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