第110話 それが何か問題が?

…。ゴソゴソ

……。

………………。ゴソゴソ

……枕がないでござる。

………ゴソゴソ、グニュ


(グニュ?)


枕ではない別の柔らかい何かがあるでござる。こんなのベッドに置いてたっけ。


グニュグニュ


(すべすべでハリがあって弾力があって、吾が輩の両手よりもう少し大きいでござる…)

こんな肌触りのもの、買った覚えはない。妹君はぬいぐるみがあるけど吾が輩はそういうのは置かないでござる。


(二つに割れてる…?)


クニュ


「あっ」


クニュクニュ


(穴…? それにしては全然指が入らないでござる…)


クニュクニュクニュ


「あっ、あっ、あんっ、うぅん…、なに、あんた尻の穴がシュミなの?」


「…違います。吾が輩のベッドに忍び込むのやめて」


羽毛の掛け布団から顔を出したのはおてんば歌姫でござる。裸で忍び込むとか夜這いかな? 寝ぼけて掴んだのは枕ではなくシオンさんの生尻だったでござる。


「こっちのが大きくて広いから。なんで客用のベッドは普通なのにあんたのはツインなのよ」


「この体型見れば分かるでござる。シングルじゃ落っこちる」


広い家、広い部屋。吾が輩の体型を考えて、服のみならずPC用の机も椅子もベッドなんかも全てが普通の人の二倍から三倍のサイズ。


「というかそろそろ帰らなくていいでござる? プロデューサーをボコボコにして失踪とか今ごろ騒ぎでござる」


「やだ、面白くないから帰らない。週刊誌に載ってなかったからいいんじゃない? 私は枕なんて嫌よ」


「いいから吾が輩の枕返して欲しいでござる」


「嫌よ、一つしかないじゃない」


「じゃあ枕代わりにその大きな二つのメロンをお借りするでござる」


「あっこら。ったく、重たい…」


勝手に入り込んだんだからおっぱい貸すくらい当然でござる。柔らかくてふかふか。枕より心地良いでござる。


「こういうのはリエッセに言えばいいじゃない。あっちのが胸大きいし」


「あー、それもそうでござるね。でも家族にはなんにも話してないしまた女の人紹介するのも……」


もみもみ。


「なんにも話してないって、どういうこと?」


「吾が輩がヘシン!するとか八人目とか、九尾の狐のお師匠さまのことも話してないでござる」


もみもみもみもみ。


「本当になんにも話してないのね…。まあ大丈夫じゃない? 私が突然来ても良くしてくれるし」


「そりゃ、あなたは顔が売れてるからでござる。ある程度テレビで見てて人となりも知ってるし」


もみもみもみもみもみもみもみもみ


「どうでもいいけど、いつまでお尻揉み続けるの?」


「枕とベッドのお駄賃でござる。まだ成人したばっかりの美少女の生尻揉みしだく機会なんてそうそうないので」


「ちっ、パンツ履いてくれば良かった」


「そういえば何故にノーブラノーパンのまっ裸?」


「…私もあんたを誰かに譲るつもりなんてないのよ。一線越えようが略奪だろうが、例え仲間でもあんたを渡すつもりなんてないのよ。言わせないでよこのばかっ」


「吾が輩モテモテー。レイミさん、リエッセさん、トモミン、カレンさんときて今度はシオンさんでござる」


真っ赤なって枕に顔を押しつけるシオンさん可愛い。そして生おっぱいは柔らかい。生尻は桃。舐めたら怒られるかな。


「そういえばリエッセ皇女さまには気を付けた方がいいわよ」


「?」


「自分の国の法律変えて一夫多妻制やろうとしてるから、間違って行こうものならロイヤルセブン全員あんたの嫁になるわよ」


「それがなにか問題が?」


「………、ないか」


ヴィーン、ヴィーン。


「お、LIMEでござる。トモミンからだ」


「なんだって?」


「『話が拗れてるからもう少し日常パートやってて』だそうで」


そういえばトモミンの実家、日本で唯一古代からの戦巫女血族である天乃宮家にご挨拶に行くとか行かないとかそんな話があったでござる。


「こじれるもなにも、伝説の勾玉食べちゃった(。ゝω・)ゞテヘペロしに行くだけじゃないの?」


「さぁねぇ、吾が輩は事情なんか何にも知らないでござるから」


コンコン


「お兄ちゃーん、朝ごはん作ったよー。シオンさんもー」


ガチャ


「あ」


「「え」」


「………………」


朝食を作ってくれた妹君が呼びに来たでござる。おそらく奥の部屋にシオンさんがいないから吾が輩の部屋にいると思ったんでござろう。


「お母さーん」


「ちょっ、瑠姫ちゃん待った!」


「オワタ\(^o^)/」


しかし吾が輩はパンイチ、シオンさんは素っ裸。お互いベッドの上で上半身だけしか見えない。妹君からしてみると両方素っ裸に思えるでござる。若い男女が裸でogxbxこれは勘違いされても仕方がない。


「なにー?」


「お兄ちゃんとシオンさんが事後だったー」


「お赤飯買ってくるわねー」


「流石母上、返しに迷いがない」


「感心してんじゃねーわよばかっ! 瑠姫ちゃんこれは違うの! まだ事後じゃないから! だいたい私まだだし!」


「えっ?」


えっ?


「えっ、あっ。~~~~~~~っ!」


えっ?


「こっち見んなぁ!」


ごきゃ!


「ぶべえ!別に殴らなくてもいいと思うでござる…」


いつもの朝は山崎パンのダブルソフトにコーヒーだけど、今朝はごはんにお味噌汁のいい香りが漂っているでござる。しかし頬が痛い。いくら超人的な異能力者同士だからって突然グーパン食らったら痛いでござる。


「ああ?」


「ヒイ!」


「夜這い掛けられてるのに手を出さないタケちゃんが悪いのよ?」


「吾が輩が悪いの? そんなん言われても吾が輩責任取れないですしおすし」


「チッ、このヘタレが」


「お兄ちゃんの変態、えっち、スケベ、童貞、ヘタレ!!!←NEW!」


「どどどどど童貞じゃねーし!」


お約束回収でござる。それにしてもトモミン話が拗れてるからとはどういうことなんでござろう。あとでなずなたんに聞いてみるでござる。


「ん、美味しい」


「本当ですか? 良かった〜。シオンさんって日本食って食べられるのかなって思ったけど、わたしこれしか作れなくて」


お味噌汁を飲んだシオンさんがハッとする。さっきまでの殺意が嘘のようでござる。


「ま、吾が輩がたまに教えてるからこのくらいはねー。白いごはんにお味噌汁、卵焼き。そして一汁三菜いちじゅうさんさいは日本人としての基本でござる」


「あんたが教えてんの? 食べる専門じゃないの?」


「きっかけは母上の怠けからでござる。なんで成長期の子どもにインスタント味噌汁とかサ○ウのごはんとか…」


「過ぎたるは及ばざるが如しよ」


「主婦としてはまったくダメでござるな」


「お義母さんそれはちょっと………」


「瑠姫ちゃ~ん」


「本当のことだよお母さん」


「ガーン!」


流石の妹君もこればかりは容赦なくバッサリでござるな。母上もその気になれば出来る人なのに。


「ふふっ」


「シオンちゃんまで~」


「家族か…いいなあ」


「なに、いきなりどうしたでござるか」


「ううんなんでもない。私は親戚も家族もいないから、こうやってごはん食べたことってないの」


「お~に~い~ちゃ~ん~?????!!!!!!」


「ごめんちゃい…」


「いいっていいって。事故だったし、もう十年以上前のことだから…その…だから…だから…。あんまりこういうの知らなくて」

うつ向いて……。テーブルに涙が落ちる。泣くのを堪えているでござるか…。まさかシオンさんが既に生涯孤独の身とは。普段のあの気の強さはその辛さの裏返しでござろう。


「我慢しなくていいのよ?」


母上がそばに寄って肩を抱く。


「ウチはシオンちゃんみたいないい子ならいつでも歓迎するわよ。そんなに凄いのは出せないけど、普通でよかったらいつでも来ていいから」


「はい…」


うんうん、家族はいいものでござるなあ。


ドスッ!


「ほあはああああ! お箸があああ!」


「あんたがしたり顔して頷いてるのはくっそ腹立つ!」


「なぜに?!」


Why?!

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