第102話 お前のカーチャンデーベソ!!!
「あー…疲れた…」
もう朝日は昇り中天に差し掛かる頃、ベッドに身を投げる。結局あのあと、般若よろしくツノ生やしたファングことシオンさんに走っては追いかけ回され空を飛んでも追いかけ回され逃げて帰ってきたでござる。
「タケちゃんおひるごはんよー。暑いからソーメェーン!」
「そうめんね…。いらないから寝させてぇーぇ…」
「あら珍しい。せっかく作ったし全部食べちゃお♪」
珍しくこたつニートが動いているでござる。明日は雪かな。下らないことを考えているとインターホンが鳴った。
<ピンポーン、スパンポーン
「ふぁーい」
母上、食べ物を飲み込んでから返事しようね。
「あらじゃあおひるまだなの? ちょうど一人分余ってるの」
「やった! ありがとー! えっと……」
「お姉さんよ♪」
「ありがとー! お姉さん!」
会話がところどころしか聞こえないでござる…。意識も途切れ途切れでまどろんでいる…。眠い…。親しそうな感じだから母上のお知り合いかな…。
「ところでにーちゃんはなにしてるんですか?」
「夜中に出掛けてさっき帰ってきたばっかなの。今ごろ夢の中じゃないかしら」
「夜中に出掛けて朝帰り…、怪しい」
「きっとネオンの光るキレイなお城に行ってるのね。いったいどこで誰とセック」
「言わせないでござる!」
これR18じゃないからぁ!
「…なにしてんの」
「やっ、にーちゃんおはよう」
母上があぶない発言をしようとしたすんでのところでツッコミを入れるとなぜか見知った褐色ロリッ子がそうめんをいただいていた。それ吾が輩の…。
「なにしてるでござるスーさん…。え? なんで家知ってんの…」
「ばーちゃんに聞いたら普通に教えてもらえた。にーちゃん人権なさそうだよね」
「ええ…」
それを言うなら人権じゃなくてプライバシーでござる。誰だ変なこと教えてるのは。
「今回のおつかい当番ボクになったから来たんだけど、ちょうどおひるごはんでにーちゃんいらないってらしいから」
「タケちゃんいつ子ども作ったの? 隠し子は構わないけどお母さんには隠さなくてもいいのに」
「おつかいってなんのことでござる」
「都市伝説をにーちゃんに解決してもらおうって話。今度は青い紙と赤い紙だよ」
「あれスルー?」
「学校のトイレに出てくるっていう、あの?」
確かトイレットペーパーが切れたときに青い紙と赤い紙どっちがいい? みたいな質問をしてきてどちら選んでも殺されてしまうとかなんとか。
「あ、スルーだ」
「ところでスーさん学校は?」
「なんか休みになった」
「そうめんってスルスルーっていけるわよね、スルーだけにスルスルーって」
わあい都合よすぎ。
「あ、ねえスーさん、吾が輩の目って今どうなってるでござる?」
「どうなってるってなんともないけど…? なんかあったの?」
「リーシャさんの爆走で冥府に逝ったらインコ頭とワンコ頭に会ったでござる」
「うーん、頭大丈夫?」
なんだろう、この理不尽。だいたいリーシャさんがあんなスピードジャンキーだなんて聞いてないでござる。吾が輩が飛び出してもそのままどっか行っちゃったしなんなのあの人。
「取り敢えずおやすみ…」
「あ、にーちゃんの部屋見たーい」
「薄い本ならウォークインクローゼットの床下よ」
「母上ぇ?!」
なんで知ってるでござる?!
トイレに現れる謎の声。赤い紙と青い紙。
夕方の
「赤い紙が欲しいか? 青い紙が欲しいか?」
生徒が
「赤い紙が欲しい」
と答えた瞬間、身体中から血が噴き出し死んでしまった。この話を聞いたことがある別の生徒は、恐がりながらも我慢できずにトイレに行った。するとやはり紙がない。そして、
「赤い紙が欲しいか? 青い紙が欲しいか?」
という声が聞こえてくる。その生徒は血が噴き出した話を思い出し赤い紙は間違いだと思って
「青い紙」
と答えた瞬間、少年は身体の血を全て抜き取られ真っ青になって死んでしまった。
「ってな感じがWikiqebia先生に載ってるでござる。この『赤い紙と青い紙』?」
「うん、この間男子が学校でこれに遭ったっていうんだ」
吾が輩も小学生の頃はこういった話は色んなものを聞いたことがあるでござる。しかし本当に遭遇したことなんか一度もない。
「じゃあその男子君は殺されてしまったでござる…?」
「ううん? 生きてるよ?」
「ですよねー。殺されてたら今ごろニュースになってるでござる。ということは正解の答えかなにか知ってて無事に逃げられたでござるか」
「ビビってお尻丸出しで出てきたところを先生に捕まったって」
「ドア開くんかーい」
吾が輩の部屋でゲームをしながら話す。あぐらをかく吾が輩に寄りかかりながらコントローラーをカチャカチャと動かすスーさん。
「あっくそ」
「スリングで衝撃系をたくさん打つか、罠を多重に仕掛けて一気にハメるかが吾が輩の戦法でござる」
都市伝説なんかじゃだいたいお決まりでドアはどうやっても開けられなくて閉じ込められるのに、今回はそうはならなかったと。
「でねー、そのトイレは先生が使えないように鍵しちゃってさー、夕方も職員室のトイレしか使っちゃダメだってー」
「じゃあ夕方になったら小学校へ行ってみるでござる」
しかし解せぬ。サード・アイの前身というカラミティは生物兵器を開発していたはず。それがなぜ都市伝説と繋がるのか。
(制御ができないってあの日記にあったけど…、それにしてもちょっと能力が人間の規格から外れすぎでござる)
お前が言うな? 大丈夫、なんともない普通のはずなのに規格外の人はたくさんいるから。姉上とか姉上とかそれと姉上とか。
「ところでにーちゃん、薄い本ってなに?」
「スーさんには10年早いでござる」
「じゃあ10年経ったら見せてー」
「はいはい、ほら雑魚がうろうろしてるでござるよ」
「おっと」
しばらく遊んでお昼寝をしたあと、スーさんの案内で問題の男子トイレに向かった。小学生の女の子の柔らかさはガチ。
「南京錠にお札…、このお札レイミさんのものでござるな」
例のトイレのドアにはお札が貼られて南京錠で施錠されている。お札はいつか見た街灯に仕込まれている陣とよく似通っていた。独学でやる人は特徴やクセが出やすいとはお師匠さまの教え。
「わざわざ空間を曲げるということはやはり中に何かいるということでござる」
「でも声しかしないんじゃどうやって倒すの?」
「大丈夫、倒す必要なんかないでござる」
「?」
よく分からない、という風に首を傾げるスーさん。お札を丁寧に剥がし南京錠を外し、思いっきりドアを蹴破った。
「やーいお前のかーちゃんデーベソ!」
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