第79話 マシュマロとはよく言ったもの
二隻の豪華客船が無人島に到着し、宿泊するコテージの鍵をもらう。
(ゆっくりしてらっしゃいって言いますけど、ゆっくりするどころか柔らかい感触のせいで落ち着かないでござる…)
『決戦は金曜日の予定だったけど早まったから木曜日よ。ミッションは深夜だから、それまではゆっくりしてらっしゃい』
ちらりと横を見ると腕を組んでくっついたままのカレンさん。大変ご満悦でゴキゲンの様子。
「今さら思ったけどこれ遠足じゃないでござる。普通遠足って言ったら観光なりちょっとした山登りしたりなのに」
「日本はバカンスっていう習慣が薄いんですよね」
日本の全体的な年間休日数は約100日~120日。長期連休はGW、夏、冬のみでどれも一週間から二週間には満たない程度。休みがあるだけマシなくらい。むしろ休みがあればあったでそっちのがお給料は減る。税金は増える。国にもよるが海外では有給休暇とは別に一ヶ月まるまるバカンスなんてところもある。日本でそんなことをしたら次に出勤したときにはタイムカードは無くなっているし、IDカードは使えなくなっている。有給休暇は強制消化ないしはいつの間にか知らぬ間に『消化した』ということになっている。もちろん日本にしろ海外にしろ、職種や業態によってそのあたりの事情は変わってくるためこの限りではない。
「所有の島がまるごとリゾートってのもまたなんだかなあって感じでござる」
「そうそう、コテージでも二人きりですから…」
ええ……、サキュバスかなんかなのかなロイヤルセブンは。
「そんなに引かなくてもいいのに。私達のだけ水上バイクがあります。深夜開始に出入りしてもいいように」
「そこはミッションありきなんでござるね」
「取り敢えず泳ぎましょ?」
海辺のコテージに到着する。そばには本当に簡易的な桟橋と水上バイクが二台。中に入ると窓からドアから全て繋がっていて壁が一枚もない。実に開放的で吹き抜ける風が心地よい。ん?
(ベッドが一つしかないのはどういうことでござる……、いやどう考えてもそういうことでござる………)
なにこのアリ地獄みたいな状況。それとも蜘蛛の巣にでも囚われたでござるか。呆れて物も言えない。ぼけっと立っていると後ろから耳に息を吹きかけられた。
「ふっ」
「んほうっ!」
「ほら、ござるさん早く荷物置いて着替えましょ。ほらほら」
「いやあの服ぐらい自分で脱げますからどこ触ってちょっ、アッー!」
「私の胸も触りますか?」
「おおおおう………、この柔らかさには感動を覚えるでござる……」
二人で着替えを終えてビーチへ向かう。そこは既に水着の少女達で埋め尽くされていた。まさに楽園。しかし男子が混ざっているのは気に食わない。がしかし、何か様子がおかしい。海から次々と上がってくるではないですか。吾が輩の濡れ透けは?!
「どうかしたでござるか?」
「せんせー!サメの群れが!!」
「なぬ?!ちょっと待ってるでござる!」
つまり吾が輩の濡れ透け少女達をサメが襲っていると?!ヤロウ、フカヒレにしてやるでござる!
「ござるさんどこ行くの?!」
急ぎコテージへ戻り、水上バイクに飛び乗る。
「って鍵がんなぁい!」
「ござるさんパス!」
「ヘイ、ナイスパス!」
「水上バイクの経験は?」
「ハワイで親父に習ったでござる!」
「はい?」
「おんどりゃああああああ!」
「あ、待って!」
全速力ですっ飛んでいくと水際でサメが大きな口を開けて今まさに女子生徒を襲っていた!
「きゃあああ!」
「どっせぇいッ!」
「タケ!」
間一髪体当たりをかまし間に合った。だが諦めの悪いフカヒレ共がうろうろしている。
「姉上、避難は!」
「この子で最後だ!あっタケ後ろ!!!」
「くっ?!」
「やああああッ!」
隙を突かれるも後ろから続いてきたカレンさんがスカイ大回転キックを決める。水上バイクで飛び上がるとかなんという離れ業。
「おおいマジかよ、やるじゃねえか」
「姉上、コイツらアオザメでござる。高級フカヒレでござる」
「それがどうかしたのか?っていうかサメの種類なんか言われても分からねーんだけど」
「残りは!」
「私達で!」
※よく見るフカヒレは乾燥されたものです。生のフカヒレはグロいです。乾燥には適した時期と日数が必要だそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます