第68話 ウルトラマンは出ません
「実は階段の下でお姫ちんが吾が輩の前を通ったとき、少し顔が見えていたでござる。本物の龍なんでござるね」
「あのー、私も龍なんですが」
「青龍たんと違って人の姿にはなれないんでござるね」
「そうですね。私たちはその
「あのー、私は人の姿にもなれるんですがー」
「あなたは驚かないんですか?私たちはこの
「外套を着た龍というのもなかなか珍しいですな。吾が輩もカッコいいツノが欲しいでござるね」
「あーのー!」
「ちょっと変態痴女は静かにするでござる」
「変態痴女?!ガーン!」
「取り敢えず家族に電話してもいいでござるか?出入国禁止令は人に化けても出られないようにするのが目的だけど、吾が輩も出られないでござる?」
「ええそうですね。一般人も出られないから大きな混乱になりますし、もうしばらく帰れないでしょう。今のうちに私も本社に連絡しておきます」
「出入国禁止令は国営放送に今すぐ報道させよう。政府の公式声明も出すよう僕が直接父と親しい友人に頼んでみる」
それぞれが動きだし、暇そうな者は立ち話。中国で一番偉い御方が誘拐されたなんて堂々と言えるワケはない。表向きは犯罪者リストのシステム異常というごり押しで通すでござる。
「あ、もしもし?吾が輩ですけど」
『もしもし?オレオレ詐欺ならぬ吾が輩詐欺とは最近も変わってるわねえ。部屋に飾ってあるフィギュアで一番大きいのは?』
「80cmのエントリープラグ。母上、ボケないで真面目に聞いて欲しいでござる。しばらく帰れなくなったから家事は妹君と二人で頑張って」
『ええー!やだー!』
ええー!でも、やだー!でもじゃないでござる。アンタ今いくつでござるか。こんなときくらいこたつから出ろっちゅーのに。
『どのくらい帰ってこれないの?』
「発表がないから分からないでござる」
『まあ、会長のおばあちゃんと一緒ならなんとかなると思うけど迷惑掛けないようにね?』
「分かってるでござる。じゃあまた、妹君によろしく」
電話を切って心配の波が押し寄せる。大丈夫かなぁ…、母上は普段何もやらないから心配でござる。暇人達の立ち話に混ざろうかと戻るところで今度は着信する。画面を見るとお師匠さまでござる。
『よーう、バカ弟子ぃー。元気してるかー?なんか面白そうなことになってるじゃないかぁーい?私も混ぜろよぉーう』
(これは酔ってるな…、この人酒飲みながら電話してるでござる…)
「お師匠さま?なにかあったんでござるか?」
『あれ?オマエー、今中国にいるんじゃないのかー?』
「そうでござるが?」
『砂漠に怪獣出たってテレビでやってんだけどー、何かの間違い?』
「は?」
何言ってんだこの酔っぱらい。
「大変だ!タクラマカン砂漠に怪獣が出たそうだ!」
「ええ?」
ひとまず酔っぱらいさまの電話を切り急いでホテルに戻る。豪奢な一部屋に人外含め全員が揃いテレビにかじりつく。
『アンギャオオオース!』
「これは…先手を打たれたと考えてよいのでしょうか?」
「ええ…なにこれ…(ドン引き」
「やった!大怪獣バトルだ!ウルトラファイトだ!」
「スーさんはしゃいでる場合じゃないでござる…、あっヘリが落っことされたでござる…」
「完全に敵性有りですね」
「重ね重ね申し訳ありません…、あれは私たちの世界の怪獣です…」
「いいなあ、たくさん怪獣いるって楽しそうだなあ」
「僕は急いで政府に戻らなければならない。政治家でも軍人でもない僕が戻ったところで、父の穴を埋めることは出来ないかもしれない。だがいないよりかはマシだろう、今こそ地球防衛軍を結成するときだ!なに、エスコンもスパロボもやってるボクに隙はない!キミ達はどうする?」
言ってることがなんかおかしいしいやどうしろと?!
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