第69話 融合

「近づくのはここまでが限界です。お二人とも御武運を」


どうしてこうなった!どうしてこうなった!!大切なことなので二回言いました!!!


「君達はどうする?」


「どうするったって吾が輩達にどうしろと言うでござる?」


「行きましょう」


「スケスケ変態痴女は静かにするでござる」


「変態でも痴女でもありません!私たちは戦人イクサビトなのですよ?誰かを守ることができるの力を持っているのです。今戦わずしていつ戦うと言うのですか?」


この変態神剣…、まさか露出癖バトルジャンキーなのでは……。正論を吐くのは構わんでござる。けどなあ…、この間山で遭遇した怪物にはまるで歯が立たなかったのにあんな東京タワーみたいな怪獣相手にどうしろと……。


「秘書ねーちゃんヘリコプター用意して」


「ちょっ、スーさん?!」


自分より遥かに強く、小さな彼女は平然と言い放った。


「ボクは『ロイヤルセブン』、『天獄鍛冶師ヘヴンズ・ミス』。天国か地獄か、逝き先は神のみぞ知るってね」


「蛮勇でござる! 一人や二人でどうにかなる相手ではないんだからここは全員集合して…」


「そんなのは野暮だよ、こんなに燃えるシチュエーションはない」


「?!」


「絶対最強!天下無敵!超絶怒濤の驚天動地! 全ての不可能を可能にする、我ら『ロイヤルセブン』!」


な、なんなんだと言うでござるか……。物心ついてそれほど年を重ねていないはずのこの少女は…。どうかしてる、頭おかしいでござる…。気でも触れているのか?


「どーするにーちゃん、行く?行かない?」


「「「「「じーーーーっ」」」」」


「だーもう分かったでござる!行けばいいんでしょ行けば! おおうしやったろーじゃねーか!怪獣でもなんでもばっちこいやー!」


で、今に至ると。


「天が呼ぶ、地が呼ぶ、人が呼ぶ!怪獣倒せとボクを呼ぶ!ボクは正義の戦姫!仮面ライダーストロン…「言わせねぇよ?!」ああん!せっかくカッコよくキメようとしてるのに……。勇者王の名が廃る!」


誰だよこの褐色少女に特撮だの勇者王だの見せたのは。こんなんがスーさんの実家にバレたら怒られるでござる…。


「さあ、お仕事お仕事」


「ちぇー」


輸送機のハッチがゆっくりと開き、砂漠の熱気に包まれる。今にも飛び立たんとする怪獣がいっぱいに翼を広げている。


「そうはさせない!」


「させられない!」


大空に身を投げ、


「「変んんん! 身!!!」」


光の鎧を纏い、


「おおおおおおおりゃああああああ!」


「ウェーーーイ!」


両翼を落とす。


「さあ!かかってこいや!」


二つの光が地に降り立つ。


さーてカッコつけたのはいいけどどうしたらいいのか分からないでござるッ!」


「簡単だよにーちゃん!一方的に圧倒的に理不尽に勝ァつ!それだけさ!」


だめだこの幼女日本語通じねえ!いや日本人じゃねえ!


「左行くよッ!」


「なら右かッ!」


ヘヴンズ・ミスが上を指差す。合わせろと、そういうことでござるかっ?!


「ハアアアアアアアアッ!ダアアアアーッ!」

翼に続き左腕をハンマーで叩き潰しッ!


「ハァァァ……、ウェイッ!」


右腕を斬り落とすッ!


「ギャオオオース!」


圧倒的ッ!圧倒的じゃないかッ!


「アオン!」


「ぬっ?!」


長く巨大な尻尾が目前に迫る!


『危ない!』


青龍がとっさに結界を張る!衝撃に吹き飛ばされ砂漠に叩きつけられる!


「にーちゃん!」


「ぶはあ!あっぶねー、助かったでござる」


『まだまだですね』


砂漠に埋まったせいで口の中に砂が入った。ジャリジャリと音がする。


「ぺっぺっ、残っちゃうな」


『水がありますよ』


「おお、具現化」


「何回も具現化できるの?ボクなんかまだ一日に一回が精一杯なのに」


『ほら、両手を出して』


「こうでござる?」


剣を一旦鞘に納めて、洗面台で顔を洗うときのように両手を差し出す。青龍がその上から手をかざすと水道の蛇口を全開にした量が出た。


「出しすぎ出しすぎ」


『久しぶりだからどうにも加減が……』


「ぶっちゃけ青龍で青色担当だからって水キャラにはならんと思うのでござるが」


『それはやっぱり青色担当は水キャラってイメージじゃないですか』


大量の水で口をゆすぎ吐き出す。飲めるくらいに軟水だ。ついでに水分を補給する。


「怪獣は?」


「ゆっくりしてる内に腕も羽も元に戻っちゃった。第二形態って感じ」


「ギャオス!(フンス」


「体力ゲージはあと何本かな」


「アオ!(ドヤァ」


それにしてもこの怪獣ノリノリである。


『私の魂を貸してあげます。だから必ず倒して』


「おお?!」


不意打ちのほっぺにチュー。淡く澄んだ水色の光に優しく包まれる。心と心が溶け合い、穏やかで、それでいて気品を感じる力に満たされる。


「変わった…!」


漆黒に染まっていた鎧は蒼白く輝きを放ち、暗く荒々しい様相を丸く柔らかく、凛とした姿に変える。


「まさか直接魂を重ねたの…?すごっ」


驚きを隠せないヘヴンズ・ミス。自分は自然に玄武と話せていた。天才だと言われた。それでも特訓を重ねて、仮想化ヴァーチャライズして、ようやく一日に一回という制限で可能にした魂の融合。しかしこの人間はたった数ヶ月でヴァーチャライズも無しにやってのけた。


(そこにシビれる憧れるゥ!)


「っしゃあ!奇跡でもなんでも起こしてやんよ!……あいややっぱ今のセリフカットでござる、フラグでござる」


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