第41話 三次元は二次元の代わり

「そういえば母上は?」


ゴロゴロ


「出掛けてるよ~」


ゴロゴロ


「明日は雪かな」


なんと珍しい。あの万年こたつむりの母上が出掛けるとは。こたつの中に感触がないからおかしいなとは思ったが、一体何があったというでござる。


「今日の夕飯てなに?」


「今日はすき焼きでござる。暖かくなってきたからそろそろ鍋の季節もおしまいかなということで最後にもう一度」


「もうすぐ4月だもんねえ」


ゴーロゴーロ


「春休みでも部活と宿題はちゃんとやるでござる」


「部活も宿題も来週からだもーん」


春休みなんて短いのにすっかりだらけきってるでござる。ああ、ほら、おヘソ見えてるでござるよ。というか妹君、一日中パジャマのままでいるおつもりか?


「お腹出すならせめてこたつの中にしないと、冷やしてお腹壊すでござる」


「きゃー、お兄ちゃんのエッチ!」


何を言ってるんだか…。


「そんなことより、今度の週末友達と映画観に行きたいんだけど」


「そーですねー」


「車で乗せてってあとお小遣いちょうだい(はぁと」


「そーですねー、いやそーじゃないですねー。お小遣いちゃんとあげてるはずですが」


「中学生のお小遣いに電車代と映画代は高いです!ゴリラ観たい!」


「ゴリラならお兄ちゃんで我慢するでござる」


この間のテストの点数があんな無残であるあたり成績表もあまりよろしくないと思われる。だというのにお小遣いあげて遊びに行かせたら吾が輩が母上から突っつかれるでござる。


「ぶー、お兄ちゃんだってあの剣買ったじゃん!わたし知ってるよ?中国の国宝のそっくりさんでしょ?テレビでやってたもん。何円したの?高かったんじゃないの?」


ニヤニヤしながらお母さんに怒られたんじゃないの?と言いたげな妹君。残念ながら買ってません。何円でもありません。だって本物ですしおすし。というかもうテレビでそんなことまでやってると?こりゃー中国政府と日本政府の動きをよく見ておかないと、どっかでボロを出してしまう可能性が微レ存でござる。


「剣は会長のおばあちゃんからの贈り物なので買ってません。いくらかなのかも知りません」


「なん…だと…?」


「どうしてもというのならゲームで吾が輩に一度でも勝ってからね?」


「それこそ無理ゲーじゃん。お兄ちゃん何やっても強いじゃん」


ふふふ、無職ニートを舐めてもらっては困る。時間は余りに余ってるから上手くなるでござる。男性の平均寿命はもう80歳。吾が輩は18歳。あと62年死ぬ間際まで遊んで過ごすのだ!だーれがこんな腐った世界のために働くというのでござるか?吾が輩はやだもーん。


「ま、本当にどうしてもと言うならちゃんと宿題を先に終わらせるか、それとも母上に交渉するか、もしくは両方でござる」


「そこはほら、あれですよお兄ちゃん。成長期のほのかに漂い始める健康的な魅惑と柔肌でなんとか…」


ごそごそと寄ってきて抱きついてくる妹君。確かに柔らかいけどソレとコレではちょっと違うでござる。これはあくまでも持論ですが、男性諸氏の夢とロマンが詰まったおっぱいが『柔らかい』のと、女の子の感触が『柔らかい』というのは違うと思います。異論は認めます。というか実の兄に色気使ってどうしようというのか。


「二次元こそが至高、二次元こそが現実。あとさすがにやっぱりお胸がもう少し欲しいですね。腰のくびれは最高です」


「むきー!お母さんとお姉ちゃんが大きすぎるだけだもん!あんなの絶対将来垂れるもん!大きければいいってもんじゃないもん!」


「ちょっ、そういうこと言うのヤメテ!」

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