第28話 パンチラと鬼
「悪い子はいねぇかーぁぁぁぁ!!!悪いテロリストはいねぇえんだよなあぁぁぁぁぁあ?!」
「ニッポンは安全な国だから安心してテロ出来るって聞いたのにー!」
「ギャァァァァァ!」
「おんどりゃあああああ!死に晒せぇえええええ!!!」
「誰か助けてくれえええ!!!」
なんとも奇妙な光景でござる。ポニーテールの鬼女がコートを振り回し、走り回りながらテロリストさん達を追いかけ回している。いねえな?と聞くということはつまりいなくなる、ということでござる。吾が輩と妹君は物陰に隠れながらその様子を見て笑っている。
「テロリストってみんな悪い人たちだと思うんだけど」
「妹君、そういうツッコミは無しの方向で」
それにしてもあのテロリストさん達。日本と言わずにニッポン、と言うことは日本人じゃないでござるか。わざわざご苦労様でござる。セキュリティの厳しい国に入ってこられて武装できるってことはそれなりに協力者がいるということ。となればそこそこ大きい組織の方々かな?
「おいそこのセイウチ」
「お熱い海洋生物まとめですな。なんでござる?」
ついさっき、手持ちのマガジンを全て使いきり見事ロープでぐるぐる巻きにされたテロリストのお方。目出し帽を取らないであげるのはせめてもの優しさ。
「ちょっとこっち来い」ヒソヒソ
「そういうマンネリな使い古された手には食われんでござる」ヒソヒソ
「そんなんじゃねーよ、いいからちょっとこっち来い」ヒソヒソ
「はぁ、しょうがない。なんでござるか?」ヒソヒソ
「お前が居たところを見てみろ」ヒソヒソ
「どれどれ…、あっ(察し」ヒソヒソ
「見なかったことにしてやるからお前から言ってやれよ」ヒソヒソ
「恩に着るでござる」ヒソヒソ
ぐるぐる巻きストのお方とヒソヒソコソコソ。
「ちょっと、妹君」
「なーにお兄ちゃん?」
「パンッ、TWO、○、見え」
「…? やだ?! もっと早く教えてよ!」
すぐにさっと隠す妹君。冬なのにそんな短いスカートにするからでござる。いや冬じゃなくてもダメ。黒いニーソの狭間からまばゆい太もも。さらにそこから黒いレースの布が堂々と全開でござる。パンチラどころかパンモロとは恐れ入るサービス精神。
「というか妹君、中学生がそんな派手なモノは良くないでござる。もっと年相応のモノにすべきでござる」
「いいじゃん出掛けるときぐらい勝負パンツにしたって。これブラとワンセットなんだから揃えるモノなの!」
「ちょっと待った。勝負ってどういうことでござるか! 誰と勝負するつもりでござるか! お兄ちゃん許しませんよ?!」
(お兄ちゃんにだけは見られてもいい下着にしてるんだけどなあ…、ニブチン…)
「おーい、ところでアレはお前の家族か? ニッポンジンは怒ると皆ああなのか?」
「姉上は特別人外でござる。みんなしてあんなんなら今ごろテロリストの皆さんはとっくに制圧されているでござる」
「ですよねー」
三人で生ぬるい目で姉上を見守る。もはや鬼退治に来た桃太郎一行が返り討ちになっているような光景でござる。
「みなさん今日は何人で?」
「30人だよお嬢ちゃん」
「今ここにいるのは15人だ。いや、俺含めたら16人か」
「時間の問題でござるな。リーダーはどなた?」
「俺だよセイウチ」
「最初に捕まっちゃダメじゃないですか」
「ダメって言うなよお嬢ちゃん、あんなモンスターがいるなんて想定外だ」
手を引かれて人質になっていたおばあちゃんは隣で水筒のお茶を飲んでいる。
「やはり静岡茶こそが至高」
何言ってんだこのババア。しばらくして警視庁の特殊部隊が突入してきて、先頭に見たことのある鎧娘を発見する。
「やあ、ファントムさん改めトモミン。遅かったでござるな」
「ブチ殺すわよ」
いやー、お迎えが濃紫の鎧に黒髪ツインテ娘とかこれどこのエロゲ?
「デパートがテロリストに占拠されたって呼ばれたんだけど」
「クソテロリスト共なら上のフードコートにまとめて置いてあるからどうぞご自由に」
さんざん好きなように暴れまわり、スッキリした顔でポニーテールを解く姉上。髪を下ろし、広げるように振るその様子だけ切り取って見ればアツい視線を集めるほどの美人でござる。
「あっ、またあなたですか!危ないから手を出さないでって毎回毎回言ってるじゃないですか」
「姉上なら大丈夫でござる。どんな刃物もへし折りどんな弾丸も素手で弾き返すでござる。つーか『また』ってどういうこと?」
「だから危ないのよ!今回もそう!銀行強盗もそう!バスジャックもそう!犯人がいちいち意識不明の重体にされてたら警察の捜査が遅れるでしょ!犯罪者の命が危ないの!」
「あー、うん、納得。出くわす度にこれなら確かに犯人の方が命の危険に脅かされているでござる」
「人をバケモンみたいに言いやがって、お前ら覚えとけよ?」
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