第22話 惹き寄せられるもの
午後もゴロゴロ、寝ゴロゴロ、買い物済ませてゴロゴロゴロ。ピンポーン!
(宅)<宅急便でーす
「はーい」
「あら? なにか買ったの?」
「記憶にございません。妹君かな?」
玄関に出てに荷物を受け取る。なにやら大きい段ボール二つと厳重に施錠された長方形の金属ケースが一つと、その鍵。大きい段ボール二つの内一つは厚みがなく平たいものでござる。
「あ、どっこいせ」
「ジジくさいわね」
最近の科学技術は凄いらしい。こたつが喋っているでござる、それも人の首が生えている。
「えーと、どれどれ。品名は…にほんとう。日本刀?」
「日本刀が宅急便で届くワケないでしょう。置物じゃないのー?」
「宛名は吾が輩でござる、でもこんなの買った覚えはない…。差出人は会長のおばあちゃん」
「会長のおばあちゃんかー。あの人なら宅急便の人の制服借りてきて偽装工作…とかいくらでもできそうよね……、でもあなた何したの?もらい物なんて」
「何もしてない何もしてない。というか何かやらかした前提で話さないで欲しいでござる」
カッターナイフで段ボールを開けると一番上に宅急便の伝票と封筒があった。伝票は着払いのもので内容が印刷されているでござる。これで送り返せということか。封筒には手紙が入っていた。
『冬将軍からの贈り物だよ。世話を掛けたからそのお礼だってさ。凄く良い剣だから大事にしなよ』
なーるほど、この間のことでござるか。そんな気にしなくてもいいのに。傷はとっくに癒えてるし、冬将軍の刀も折っちゃったし。って待て待て待てーい!
(あの件はお師匠さまと吾が輩、冬将軍に雪女さんしか知らないはず。何故おばあちゃんが知ってるでござるか?何故冬将軍がおばあちゃんを仲介にするでござるか?いやそもそもレイミさんのおばあちゃんが会長のおばあちゃんなんだから全部筒抜け丸裸でござるか)
オンドゥルルギッタンデスカー!
(あー、お師匠さまもいたでござる。そういえばサロンにいたでござる。どーせ油揚げで買収されてるでござる。本当に食い意地だけはしっかりしてるんだから。仮にも弟子を接待で売るなっていう)
「へーっきし! …風邪か?」
それにしてもこの段ボールはなんなのか。取り出すとたくさんの誓約書が入っていた。読んでも読んでも難しい内容ばかりでまるで頭に入ってこないでござる。まさに頭がぱんぱかぱーん!
『法律上書類は必要だから、全部読んでサインして送り返してね』
マ、マジ? 物差しを持ってきて高さを測ってみる。約50cm。これ全部読んでサインしろってこと? 法律上ってどういうこと?
「なになに? おばあちゃんの手紙? なんて書いてあるの?」
「真剣だから、この書類の山に全て目を通してサインして送り返せと…」
「し、真剣? …どんまい☆ミ」
「うへえ」
書類の山にうんざりでござる。ちなみに平たい段ボールは台座でした。一緒に入っていた鍵で金属ケースを開けたら日本刀じゃありませんでした。テレビゲームに出てくる中世ヨーロッパみたいな装飾の剣でござる。しかして鞘から抜刀すると、刀身はそれほど厚みがなく、なにやら中華風味の文字の刻印が両側に施されている。何か文章であろうことは分かるが、それ以上のことは分からない。柄と刀身の間、ちょうど装飾の中心には真っ青な大きい宝石が埋め込まれているでござる。鞘と中身の装飾が違うなんてそんな剣あるでござる?アニメ漫画ゲームでしか知らないからなんとも言えない。
「もうなにがなんだか」
「わっ、すごーい。これ青いの宝石? 売っぱらったらいくらになるかな?」
「やめれ」
夕方、書類の山が3分の1ほど片付いたときに妹君が帰宅した。早速組み立てた台座に飾った剣を見て驚いていた。そりゃーこたつにダンボールに剣にっておかしな光景でござる。しかし吾輩フィギュアはまず飾ってから片付ける派。まず開けるのが先、片付けるのは後。部屋のその辺が散らかるのはお察し下さい。
「ただいまー、ってうわ。なにこれ?」
「おかえりー。剣だって、本物の」
「本物…? ホンモノって何? そういう名前なの?」
「本当に斬れるのよ」
「そこで頭から煙吹いて痙攣してるアザラシは?」
ビクンビクン
「それはお兄ちゃんよ」
「男の子がカッコいいものに憧れるのは分かるけど、剣? 本当に斬れる剣…? うそでしょ? 買ったの? なんでそんなの買ったの? そんな危ないの買ってどうするの? なんなの? 馬鹿なの?」
「武蔵野のおばあちゃんが送ってきてるのよ」
「お兄ちゃん何やらかしたの?」
「だーから吾が輩が何かしたっていう前提はやめて欲しいでござる。何にもしてないから」
「うわっ、トドが起きた!」
「ただいまー」
「あ、お姉ちゃんおかえりー」
ビタンビタン
「なーんなんだこのセイウチは」
「海洋生物でまとめるのやめてくださいでござる」
書類との戦いはこれからだ!
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