愛した私には何も残らない

ゆう

第一章 当たり前じゃない当たり前

気づいたら異世界にいた。

そんな事は本の中ではよくある事で私もいつか行けたらなんて思ってた。異世界人に召喚されて共に冒険したり悲しんだり喜んだり、恋をしたいと思っていた。

しかしそんな事が起こることもなく4年が過ぎていった。

そしてついに私にとって運命の日とも言える日が来た。

大学受験を控えた1月下旬。私は教室に一人残って苦手科目である歴史の教科書を読みふけっていた。

「もう、帰ろうかな」

ため息混じりに椅子から立ち上がり立てかけてある時計をボーッと見る。時刻は6時近くになっていた。

「え?」

体が後ろに倒れた。けれど体が地面に触れた感覚はない。それはまるで体が宙に浮いているようだった。

「なに…これ」

外では風に煽られた木々が大きく揺れている。

「外は動いてる…。私だけが止まっているの?」

時計の時刻も夜6時を過ぎた。

目は動く。息もできる。腕と足は動かない。

「どうなってるの…本当に……」

「…え?」

体が、髪が、制服が、ゆったりとした気持ちのいい風に吹かれた

窓も開けていない。エアコンも空気清浄機も付けていないのに風が起こるのはありえない。

明らかに未知の現象が起こっている。

「えっ!……うそ…」

机や黒板、掃除用具箱などの必要最低限の物しかない教室が一気に新たな世界へと上書きされた。

それを一言で表すのであれば…

アサガオ(ヘブンリーブルー(青色))の花畑だ。

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