第14話 きっかけ
前からだけど以前にもまして進まない。
1歩進んだかのように感じていたら10歩くらい下がっているような気がする。
それはこれまでの10年くらいの歩みが経った1年で覆ってしまったような錯覚。
いや、1年かけて歩んできたつもりなのに10年前と何も変わっていないことに気付いた時の衝撃と言った方が正解かもしれない。
何かを書こうと思った。
きっかけはなんだっただろう。
人が死ぬ話は嫌い。
人を殺さずとも感動する話はある。
鬱屈とした気分を晴らしたい。
爽快で愉快な話も良いけれど、分かってくれるという共感の念を抱けるような話が欲しい。
伝えるのが下手。
だから伝えることを向上させるためにすることは?
SFが好きだった。
SFショートショートが好きだった。
自分にも人をクスリとさせられるような話が書けないかな。
他人に興味が無かった。
他人にどうして人が話をしようと思うのかは興味があった。
人に関心を持とうと思った。
自分を薄くしようと思った。
理想が何かは分からない。
理想を考えることが一歩だと思った。
ただ好きだった。
本をたくさん読んでいたわけじゃ無い。
それでもいつも傍らに本があった。
本を読めばそこには憧れた世界があった。
本を読むことさえも冒険だった。
見知らぬ土地
見知らぬ光景
見知らぬ空気
求めていたのだろうか?
それとも自己満足だったのだろうか?
今目の前にあるものと同質のものが連なっていたとしても、その感動に違いがあるのは何故だろうと思う。
景色を見ることの雄大さは理解できても、景色を見るために苦労をするのは何故なのか。
身の回りに溢れかえった情報に押しつぶされて、方向を見失ったのは何故なのか。
身を振り返って考える。
整理をするために書いていることもあった。
今も同じなのかもしれない。
そして気付く。
今も昔も変わらずに、10年前と同じ。何も進歩していない。
周りに取り残されて、増えたか分からない知識と衰えていく身体。
忘れていく光景と絶対量の減った脳と無限に広がるバーチャルな世界。
終わることの無い流転の波に飲み込まれて、ただそこに残されているのか流されているのか、周りを闊歩する人たちの渦はそよ風のように目の前を通り過ぎてゆく。
いつまでも覚めることの無い夢を見ているような錯覚を覚えながら、今日も明日も昨日さえも全てが同質化していく自分。
変わったことが良いことなのか、変わらないことが良いことなのか、良し悪しは必要なのか、何も考えたくない気分になる。
やりたくなくなければやめればいい。
いつまでも言い出せずに
そのまま続けるよりも
振り切ることも必要だと頭では分かっている
それでも何も変わらないのは
理解しても、分かっていても、心とはやっかいなものだから
順応と適応と忘却と安定と安全を無意識に欲っしている。
今いる所から抜け出せない。抜け出したくないとどこかで感じている。
それはきっとつまらないのだろう。
本質的につまらない。
無視機に欲しているのはとてもつまらないものなのかもしれない。
その殻を破るためにすっとんきょんな事をして
無茶苦茶で
理解されないようなものに手を伸ばしては怪我をするんだ。
そんな自分を戒めて
つまらない自分は良いことだと
言い聞かせていた。
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