第8話 チョコをチョコチョコ
チョコをちょこっとだけかじって口の中へ導くとチョコの香りが鼻を抜けていく。
徐々に来る甘ったるい触感を舌で上あごですり潰したり、歯の間へと潜り込んでいくのを舌の先で触ったり、唾液を混ぜて溶かしながらほろ苦い感触を味わう。
どうしてチョコが美味しいのか、これはチョコレートの味と分かるのはなんでだろう? 目を閉じて口の中に入れられたらチョコだって分かるのかな? 舌の上で転がしてゆっくりととろけていく。
こうしてチョコの触感を味わっている間にすぐにチョコは口の中からいなくなってしまって、いつもの味のない世界へと戻っていく。
これが普通だったんだと思いこもうとするんだけど、さっきまでの口いっぱいに広がったチョコの感覚が忘れられない。
もう一個口の中へと放り込む。
今食べているのはチョコだけのコロコロとした小さな塊。
これが高級チョコだったら中にベリーソースが入っていたり、生クリームと混ざったトリュフだったり、形も様々で、同じチョコなのにパリパリしたり、ふわっとしたり、とろけ方も次元が違ったり、サクッとした触感だったりといろいろ味わえるんだと思う。
でも今食べてるのは普通のコンビニとかで買えるチョコ
こんなって言っちゃダメなんだけど、こんなチョコだってすごく美味しくて、チョコチョコ口に運んでいくうちに袋は軽く、チョコが転がる音も寂しい軽い音になってしまった。
後一個、もう一個。口の中に広がる感触を楽しむ。
こんなに食べたら太っちゃう。
そう思ったとしても止められなくて、ビターって書いてあるやつだからきっと大丈夫とか思って油断する。
袋を中を覗くと後一個。
振ってみてもコロコロと一つ転がる音がするだけ。
あぁ~、もう終わっちゃう。
口の中を掻きまわして、残っているチョコの風味を探してる。
最後の一個は大切にするんだ。
いつ食べようかとか考えながらも別のことをしていたら最後の一個だったのを忘れてポイッと口の中へ入れちゃった。
あっ! と思ったけど入れちゃったものはしょうがないから今まで通りコロコロ転がしながらチョコの風味をまた楽しむ。
無くなったらもうおしまいで、でももう甘ったるく感じて来ていたから充分かな、なんて考えてる。
実はまだ引き出しにはチョコが入っているので最後なんて気にする必要は無かったんだけど、それでも私は我慢して次の袋は開けない。
えらい、えらい。なんて自分のことを褒めたりして。
次はいつチョコ食べようかななんて、考えてね。
あ、今日はバレンタインだから隣の人にもお裾分けすれば良かったかな。
さっきのは食べきっちゃったからもう一個開けなきゃ。
なんて甘い考えをしてる。
ねぇねぇ、チョコ食べる?
え? くれるの? ありがと!
なんて会話を想像して声をかけたら、袋ごと持って行かれてしまった。
あ、と思ったけど。まぁそりゃそうか。1個だけとかないよね。
あ゛ぁ~、私のチョコ。なんて思いは表に出さず。恩着せがましく渡すのだ(笑
だから今日のチョコはもう終わっちゃった。
また買いに行かなきゃ。
ちょこちょこ買いに行くのも楽しいけどね。
と、いうことを考えながらチョコをチョコチョコ食べていたら。あっという間に無くなってしまった。うん、まだチョコを食べている時の表現がイマイチだな、チョコを食べながら考えよう。
といって、机の下にある段ボールからチョコを取り出し……って何個持ってるんだよ(ノリツッコミ
え? いっぱいあるから食べたかったらあげるよ。しょうがないなぁ~
私の隣に座っていればね。
なんちゃって🍫
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