第3話 散策
ハカセペアと別れ、ぼくたちは右側の薄暗い廊下へ向かった。
「ちょっと電気ないの? 暗くて進めないって」
ぼくを盾にヒメが背中をギュッと握りしめる。
確かに不気味で怖い。
どこかにスイッチがあるはずなんだが。
壁際を目視すると白いスイッチを発見。
押してみることに。
「早く押してよ。なんで固まってるのよ」
「これを押したら床が抜けて、
針千本の地面に串刺しにならないかと」
「もう!」
ぼくの手を振り払ってヒメはパチンと押す。
すると天井の丸いライトが歓迎するように一列に点灯。
「ほら先に行って」
背中に回ったヒメは命令口調気味になった。
およそ50メートルくらいある長い廊下。
両サイドはガラス戸になっており、
雨粒がぎっしり詰まっていた。
ゆっくりと進むと左腕を捕まる感触が。
視線を送ると白ちゃんが震えながらしがみついていた。
あえて何も言わずに進むことに。
その突き当たりには銀色の扉が。
「ここなんだろう? 開けてみて」
背中からヒメが圧力をかける。
「いや、でも」
「忍者屋敷じゃないって。早くしろ」
抵抗も空しくドアを開けた。
「わぁー、調理場なんだ」
タンスのように大きい食器棚と、
両開きの冷蔵庫に赤ちゃんが入浴できるくらいのシンク、
それとコンロにテーブル。
ヒメの言うことに間違いないだろう。
「問題は食糧ね」
その通りだ。
ここに食べ物がなかったら、
ぼくたちは飢えてしまう。
ヒメが冷蔵庫の前へ。
業務用だろうか、
とにかく大きい。
ヒメと比べると2倍くらいあるかもしれない。
「結構あるわ、
ブロック肉とか魚とか。
3日分くらいあるんじゃない?」
よかったぁ、これで飢えはしのげる。
それにしてもきれいなキッチンだな。
ピカピカに清掃されている。
ネズミやゴキブリもビックリするだろう。
右肩をちょんちょんと白ちゃんが叩く。
「ん?」振り向くと戸棚が開けっ放しになっていた。
「お米にパン。それとパスタ。ラーメンもあるね」
そっと覗くと乾物系の食料がぎっしり。
つい見とれてしまった。
白ちゃんは更に隣の戸棚を開けると、
缶詰もぎっしり満員電車のように密着していた。
これで食糧は確保できた。
「うわぁ見てよ。調味料もいっぱいあるよ」
シンク下の戸をヒメが開けて目を丸くしていた。
要するに明日までの辛抱だから、
巨体な熊さんでも食べきれないから問題ないだろう。
もう1つ肝心なことを確かめることに。
ぼくは水道の蛇口レバーを落とす。
すると滝のように水が落下した。
ホッと胸を撫で下ろす。
「ハカセさんたちと合流しようよ」
ヒメと白ちゃんは既にドアにもたれかかっていた。
「うん」と頷き後を追いかける。
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