異世界でも美味い肉が食べたい

@masumoto

第1話 肉の始まり

 トラックにドカンとひかれて異世界に転移してから早三年。知的生命体が暮らす異世界でよかったと思ったのも束の間。言葉が通じない。でもでも言葉のおぼつかない移民が就きがちな職業「ベビーシッター」でがんばりながら早三年。今では好きな食材が買えるまでになりました。うれしいね。そこで買ったのがどかんとかたまり肉。海水から取り出した塩をもみこむ。焼いて温めた石の上にジュワっと置いて四面に焼き色。ほどほどに焼いたら取り出して手元へ。

 表面だけカリっと焼いて中はまだ赤くやわらかな肉。その右端1.5センチぐらいにずぶりと刺したナイフの感触に感動する。ついについに。緊張とともに口に含んだ瞬間に口腔に満ちる幸福。生きていて、よかった。

 そらそうよ。「うまい肉が食べたい」欲求は、異世界に転移したからって冷めることないですよ。むしろ高まる。ばかり。なのに。何もいないのよ。知ってる生き物が。豚も牛も羊も猪も、馬も兎も鹿も熊も、鶏も鴨も駝鳥も鰐も。とにかくいないんで、生き物を見つけてもそれが美味いかどうかわからない。つらい日々でした。

 まあそれに、自分は元の世界では店で食べるばかりでしたんで、謎生物の肉をゲットしてもどう調理したらいいんかわからんわけです。電子レンジもオーブンもないこんな世の中じゃ…まあとりあえず焼いてみよ、と思って焼いたわけですけど、味付けや料理方法で味は変わりますから、ここからもわたしはさらに美味しい肉が食べられるように苦闘を重ねていくわけで。その記録を記していきますね。

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