恋環 (xxxvii)

 ――わかった、いいでしょう。

 私もすでに高校生。恋愛のれの字も知らなかった泣き虫環とは違って、自身を冷静に把握・分析するだけの客観性は持っている。

 今の私が午角くんに興味を示していることは事実として認める。そこを否定するほど私も子供じゃない。


 なぜ彼に関心を持ったのか。理由はいくつか挙げられる。

 まず、彼は私のことを正しく理解し、私に必要な自己肯定感や軌道修正の案、はては男子との交流経験値まで与えてくれる、ほかの男子とは一線を画するクラスメイトということ。

 次に、見かけによらず知的な一面がかいま見えたり、比較的、精神年齢も平均より高い雰囲気があるところ(自分をヒトだと錯覚している残念な生き物しょくいんしつのよびだしじょうれんきゃくとは、広大な宇宙に広がり輝く星の雲と、おばあちゃんちと同じ匂いの仏壇の煙ぐらいひらきがある)。

 そして、運動部に所属していて体格もよく、高身長という点。加えて顔もまあまあ悪くないほうだと思う。ドラマのかっこいい俳優さんにはもちろんかなわないけれど、じゅうぶん、平均以上の部類に入る。


 つまり、午角くんかれ異性おとこのこの選択肢としてアリかナシかでいえば、大アリのアリとの結論が導き出される。


 私のがわはいいだろう。私がわには、午角くんを恋愛対象としてみることはじゅうぶんに可能であることが確認できた。

 


 恋愛は、とても不便で残念なことだが、一方の気持ちだけでは成立しないようにできている。双方の合意が必要だ。

 あえてこの犯罪行為プリムズゲームにふさわしいたとえ話を持ち出すなら、恋愛はろんりせき、P ∧ Q だ。命題 P と命題 Q がともに真であるときのみ成立しうる。ろんりわで成立させたなら、それはただのストーキングだ。

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