弁解 (xxxi)
このクラスで級友と親しくLINEのやりとりをするのは、環にとっては初めてだ。
親しく、という条件を外して業務連絡を含めても、やはり3年D組内でのLINEは今日が最初だった。
スマートフォンを買い与えられて以来、毎年、LINEやメールアドレスを交換できるようになるクラスメイトはきわめて限られた。まったくできなかった年も一度だけではない。
毎年の4月、教室のあちこちで進められるアドレス交換をぽつねんとながめるのは、環にとって恒例のわびしい行事だった。
運よくすぐに仲よくなれた子がいればその子と、いなかった年はその後の可能性に賭けつつ既存の友達との親交を温めた。
難波瀬織、
一方で、自分の劣化版を見ているようでつらい部分もある。あんなにも人を寄せつけない空気を発することはないのに。
私も人のことはけしていえないけれど、気まぐれで誰かがふらりと入ってきてくれるかもしれない程度には、心のドアをオープンにしている。その雰囲気は見せているつもりだ。
春日くんと須磨くんのふたりは、残念ながらドアが開いているようには見えない。あれでは声をかけにくいと思う。もっとフレンドリーなムードをだしていければ彼らだって。
難波さんは――皆までいうまい。控えめにいっても、誰も入ってこさせないよう、漫画みたいにドアにバツ印の板を釘で打ちつけてある。もっと遠慮なくいえば、ドア自体がない。どうやって出入りしているのか謎の、なんだかよくわからない建築物にたてこもっている。
17年生きてきたなかで、あそこまで完璧に無表情を貫ける人を私は見たことがない。笑っている姿がまったく想像できない。
やはりたぶん、
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