第47話2-12.とあるランキング
―――インハイ予選決勝が終わり・・・次の日は朝からシトシトと雨だった、雨はあまり好きではないのだ、雨の日に外で殴られると色々大変だからだ。まあ最近、万蛇木君達に呼び出されることもないが。
それにしてもだ。
万年最下位・・・全員退学秒読み・・・ヘアスタイルキモイ連中・・・学園の恥部・・・等と言われた“Z班”の優勝はとんでもないインパクトだったようだ。そこら中から視線を感じるし能力を使わなくても色々聞こえてくる。
多少は気になるので霊眼を使って周囲の会話を覗くと下手したらほとんどすべての会話が昨日のグループB決勝戦関連のもののようだ。生徒だけじゃない教師もだ。
―――Z班すげかったな、DDに勝つなんて鳥肌モンだぜ―――
―――ジンメだけじゃなくって全員強かったってオチかよ―――
―――おかしいと思ってたんだよな、あいつらなんか前からオーラが違うしよ―――
―――おまえそんなこと言ってたか?キモイって言ってたよな?―――
―――んなこと言ってねえし―――
―――青木に謝っといた方がよくね?―――
―――全員竜族ってありえなくね?―――
―――隠してたのかよ―――
―――今までずっと何年もかよ、信じらんね―――
―――この時を待ってたんだぜ!きっとさ!―――
―――何を待ってたんだよ?―――
―――俺昨日ずっと見てたんだ!Z班やばくね?やばくね?―――
―――第二部もヤバいぜ!あのジェノサイドバルカン下したんだぜ!―――
―――いやZ班のがすげーって!―――
―――どっちもZ班だろ?―――
―――掃きだめ6高から2チームも全国行くんだぜ!とんでもねえ!―――
―――あの赤い巨人やべえ!夢に出るぜ―――
―――緑のアフロのスナイピングもすげえよ。纐纈には負けてたけどな―――
―――ピンクツインテールの城嶋さんもやっぱすごいし―――
―――いやおまえ第4高の魔女だろ?忘れてるのか―――
―――もう6高生だろ―――
―――まあでも、あの青い髪のあの人だよな。全部持ってっちゃった感じな―――
―――いや素晴らしい試合でしたね、先生―――
―――6高の歴史に残りますね、先生―――
―――Z班の星崎さんかわいくね?―――
―――俺も思った、あんな顔だったか?―――
―――全員竜の召喚士って反則だよ!竜族だったって知ってた?―――
(よしよし・・・僕が突然竜の召喚士になったことはこれで目立たなくなったはず)
さて・・・Z班はインハイ予選、グループBを優勝し全国大会に駒を進める。とういわけでまた個人戦優勝した時のようにひどい朝の騒ぎを恐れ気配を消していたのだが・・・3-Eの僕の教室の前に城嶋由良と花屋敷さんが陣取っておりそこまでの騒がしさはなかった。
上機嫌なピンクツインテールが近づいてくる。
「おはようございます。神明様、由良でございます。昨日はお疲れ様でございました。そして心より優勝おめでとうございます」
「おめでとうございます」2人で丁寧に頭を下げてくるのだが。
「いえいえ、お2人のチームこそグループC優勝でしたね。さすがです」
花屋敷さんが先頭で3人で教室に入ったのだがなかなかの注目を浴びている。
「―――しかし神明様、ものすごい人気になっております」唐突だな・・・。
「なにがですか?」
「神明様といいますかZ班第一部の方たちのことでございます」
「へえ」
全く興味ないが何故かその証拠を見せたいのだそうだ、由良って変わった子だな。
タイガーといい由良といいなんなんだろう。そういえば昨日はタイガーこそ疲れているっぽかったので霊眼ですぐ眠らせてあげたのだ。さぞ熟睡できたことだろう、アフロの言っていたことはこれだったかとすぐピンと来たのだ。霊眼の魔力だと精神感応系に強い抵抗のある竜族ですら眠くできる、これもいい実験になった。
―――そして何故か城嶋さんや花屋敷さんや根岸薫と男子生徒数人が。つまり3-Eの教室にZ班第2部が全員来てしまったのだ。授業中なんですけどね・・・。まわりの生徒たちは気配を消している。
ガリバー兄弟も近くで見ると本当にでかい・・・教室が狭くなったかのようだ。あれだな村上くんよりも肩幅があるのだ。
今は授業中・・・。
第6高校だけだろうがイベントの次の日は全科目自習になるため、やりたい放題なのだ・・・、クズだらけの6高の生徒はイベントの次の日は出席率が異様に下がるためだ、そして学校側も出席そのものをとらなければいいという選択肢・・・ダメだこの高校。
しっかし目立つし濃いのが来ちゃったな・・・。
うわ!また・・・歌う気か。
ゴーゴゴ!ゴーゴゴ!・・・
ゴーゴゴ!ゴーゴゴ!・・・
ピンクツインテールが目線で注意しているが伝わっていないようだ。その隣の元第一高校の女性も非難の表情で腕組みしている。
「やめて頂戴、ガリバー兄弟。暑苦しい。あなた達空気読めないんですから」間違いない無理だよ根岸薫さん・・・。最近アフロの間違いないがうつったかな?
「それは心外であーる!我々は名主のため日夜努力を惜しまず・・・」
「それは心外であーる!我々は名主のため命を懸け志を・・・」
あ!言い間違えた!
ま・・・まさか。
「瀬川―!キッサマー!噛んだな!鉄拳制裁――!!」
グッボッハ―――!!
「うるさいのよ。説明できないでしょ」
いや噛んでないよね。言い間違いでは・・・。そもそもどっちの言い間違えかも・・・。とにかく鼻血がでているのが間違いない瀬川さんだ。
「とにかくですね、神明さん。この根岸薫プレゼンツ。降魔六学園人気ランキングを見てください」そう言って根岸さんは大仰なポーズと共に僕に大きな端末の画面を見せた。このサイトも根岸さんが作ったのだろうか。
「総合ランキングを見てください。人気ランキング第1位は・・・我らが希望の星!輝ける支配者!神明全さんなのでありま~す!」
パチパチパチ!
Z班第2部の人たちが拍手している。・・・普通に怖い。
・・・何?何なのこれは?
「これはわたし、根岸薫が生徒のナマの声をお届けするべく作成し運用しておりますサイトなのであります。アプリを登録いたしますと定期的に人気投票が可能なのであります」
はあ?
「神明全さんは以前から人気ランキング第1位だったのですがご連絡が遅れまして申し訳ありません・・・ただですね。十傑1位の桔梗さま・・・さんに勝ち、昨日さらに十傑2位の不知火玲麻さんに勝ったことで得票数が非常に非常にですね、増えたわけであります」
はあ?僕は小首をかしげている、なんのこっちゃ?
「えっと、つまりですね・・・今日もすごい美しいですね・・・いええっと」
「それはわたくし、城嶋由良がご説明いたしましょう。戦闘能力も人気も名実ともに神明全さまがこの六つの学園でトップであるという証明でございます。・・・なのに!なのにこんなに奥ゆかしくて。由良は目頭が熱くなる思いでございます」大げさにジェスチャーしている・・・。
あの?たまたま勝っただけで才能は全く桔梗と玲麻さんら二人の下だし、人気ってどういう意味だ?ぶっちぎりで嫌われている僕を人気1位だと偽ってなにを企んでいるのだろう?投票しているのはひょっとしてZ班第2部の数人だけなのでは・・。
「しかしわたくし驚きましたわ。Z班第1部の方たちも神明サマの御チームメイトでらっしゃるので只者ではないとは思っておりましたが・・・まさかここまでとは・・・全国大会の強豪DD-starsをあっさり下してしまうなんて」城嶋由良はピンクツインテールをゆらゆらさせながら僕の手を握って力説しているがよくわからない。今日はいつにもましてジェスチャーが大げさだ・・・何かいいことあったのか?
根岸薫が由良を押しのけ割って入ってきた。由良に睨まれているが気にしていない様子だ。
「あのよろしいでしょうか?さらに人気ランキングは昨日大きな変動がありまして。なんとですねZ班第1部の方々が全員30位以内にランクインしたのです」
「ふうん?」ほとんど興味ないがまあ聞くしかない感じだ。ナマのデータじゃなくって根岸さんが捏造したバイアスのかかったデータだよね・・・意味ないと思うけどな。
―――ランキングには9位にアフロが、10位にオールバッカーが入っており、18位に女子の票でランキングが伸びたとのことのでダークアリスが入ったらしい。なんか僕以外は本当っぽいのだが。村上君が24位、青木君が29位で、ほとんど出番の無かった星崎真名子まで30位にランクインしていた。ちなみに2位が不知火玲麻さんで3位が停学から復帰したゲヘナの秋元未来。4位は如月葵で5位が西園寺桔梗だった。
「―――不知火玲麻さんは第3高校で不動の人気があり―――西園寺桔梗さま・・・さんは第1高校からの組織票がありますが1高は生徒が少ないですから―――ちなみに神明全さんは女子生徒からも男子生徒からも多数票が集まりまして―――特に4高にはいくつかのファンクラブもできていまして―――“神明全ファンクラブ”や“女神のまなざし”や老舗“BL研究会”等々から票が集まりましてなんと今回50%以上の得票率となりましたぁ」
なるほど僕の票は第4高校が多いな・・・つまり城嶋由良が票を操作しているわけだ・・・僕が高いのは結局バイアスがかかっているから・・・か。でなければ8000人中最下位だろうからなぁ。
しかし思ったよりも自分以外のところは興味深い。
「それで根岸さんこの二つ名候補っていうのはなんですか?」
「それは神明さん、お目が高いです。どんな通り名がいいのかアンケート後にこれも投票していただいているのです」
「なるほどニックネームか、コメントもあるね」
村上君は“赤ノ巨人”が二つ名候補で1位か次が“キョジンテツヤ”、そのままやな。コメントは―――巨人過ぎてびびった―――夜出会ったらマジ逃げる―――ほとんどモンスター―――赤い毛むくじゃら顔怖い―――等々面白い。
青木君は“顔芸”“カタマリ坊主”“金棒”“挑発する鉄塊”か―――あの固まった時の表情―――ちょっとかわいい―――使えないはずの能力が、まさかの鈍器―――顔、顔ムカつく(笑―――。なるほどね。
ダークアリスは“クールビューティー”“スタイリッシュクィーン”“負のカリスマ”か、まあ見た目はいいんだけどね。コメントはもういいや。
アフロは“ミドリアフロ”“スナイパーアフロ”“ブロッコリー”“アフロ軍団長”“トリプルスターアフロ”“アフロ”やっぱりブロッコリー入ってるね、アフロ率も高い。
むう・・・面白い。
オールバッカーは“アイスブリザード”“氷の覚醒者”“マスターフリーザー”って氷の覚醒者?・・・いやどれもカッコよすぎだろう・・・。オールバッカーのくせに。―――見つけちゃった私の王子様―――かっこいいかも―――ナイスバトル感動すますた―――。えええ、なんだよコメントもいいのばっかじゃないか。アフロのコメントもやっぱ見ておくか―――スナイプするときの目に痺れます、あたしも見てホシイ―――実はイケてる―――髪型以外合格―――男がしびれるタイプだぜ―――。あれ、いいことばっかだな、髪型のいじりはあるけど。
髪型以外全部合格か・・・なるほど。
僕は・・・ああ・・・その前に3位の秋元未来も書き込み多いな“デモンアイドル”“プラチナキューティー”“ダブルキャスト”“デビルレディ”等々、多いな。コメントも―――よく停学とけたな―――ずっと応援しています―――ミックちゃーーん―――魔族でもくぁわぁぃぃ―――ゲ〇ナ嫌い!!!―――落差満点―――いやあコメント多いな。如月葵とか桔梗も気になるけど興味ないからまあいいや。由良も7位に入っているね。纐纈君が6位か。8位北川重人ってだれだっけ・・・思い出せないな?
んー。意を決して見ておくか。
さて僕は・・・“姫”“女神”“疾風乙女”・・・なんだこれは・・・?悪口・・・やな?
“アンタッチャブル”“超麗人”“竜姫光臨”“ドラスレランサー”“プリンセスビーム”“性別?”・・・いやまともなのもあるけど・・・最後の性別ハテナってなんやねん!悪口じゃないか?・・・コメント見たくないけど・・・まあ少しだけなら―――マジ美人―――ガチで美人―――抱いて―――抱きたい―――アンチうざい―――あの青い髪触りたい―――もうどっちでもいい―――いつも一緒にいる緑のアフロの人とできてるんじゃ―――うん??・・・たっくさんあるけど・・・もういい、もう見たくない、僕以外のZ班はいいこと書いてあるのに。根岸さんの創作ならもうちょっとイイこと書いてくれても・・・。
普通に嫌がらせじゃないか・・・。ああ落ち込むなぁ。
だが根岸さんは得意顔だ・・・ぼくはガッカリだが。
「―――これこそがナマの声。わたしのジャーナリズムの根幹なのであります」嘘つけよ・。
「―――うん、ありがとう。僕以外のところは楽しめたよ―――」
「すみません。もっとコメントするように指導いたします神明サマ」「ああ城嶋さん、いやそういう意味じゃなくって。と、とにかくありがとう」ガッカリ感が半端ないし・・・どうも納得がいかないが、まあランキングなんてそもそもどうでもいい。
とにかく無料ランチを食べたら美術講堂でサボろう。
・・・どうでもいいけど・・・でもあとで部室のPCでランキングの続きを一応見ておこうか・・・。
ああもう僕は時間がないのに・・・考えることが、しなければならないことが山ほどあるのに。
まだテロ組織ゲヘナくらいしか潰せてないからな、ゲヘナの最後の幹部は香楼鬼にまかせておくとして。
それよりも校内予選グループB優勝って賞金はでないのかな。ああそうだ、クレアさまに連絡してゴールドカードを使用していいか聞かないと、欲しいものがあるのだ。アレだけはどうしても欲しい。便利だもんな。でも高いからな・・・。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます