第36話2-8-5.生命の裏庭―――それは台風の芽―――
―――さてアフロたちの7体の竜は王城の広大な地下に山ほどいる弱めのゴーレムを倒してもらう。24時間で一周できるようにする・・・壊れたゴーレムは次元環の強制魔力で恒常維持されるため・・・つまり自動で復活する。7体の竜をかち合わないように計算するのが大変だったが。
次元環の魔力で午前2時にリセットされてすべてのゴーレムは復活する・・・というのが自動レベルアップの
しかし以前から思うがゴーレムを地下に配置していると言うことは4000年前は地下からの襲撃に備えていたのだろうか。やや不思議だ。
―――さて当然、兵舎の中とりわけ男子の割り当ての部屋はカオスそのものだ。
特訓中とはとても思えない適当な服装に思い思い好きなことをしている。
寝てるか(大抵ダイブツくんだ)、マンガか雑誌を読んでいるか(オールバッカ―が多い)、リバーシや将棋をするか(青木君と村上君だ)。携帯ゲームを持ってきて太陽光で充電して夜遊んでいたりする(青木君だ)。
常時わずかながら魔力を消費するため疲れやすかったり不眠になったりするはずなのだが。
(こいつら頭おかしいのかな。毎晩遊び疲れて全然熟睡しているじゃないか。遊ぶと言うことに対しては常人ではないことは確かだ。あと何故か青木君は星崎真名子が気になって仕方ないらしく、毎晩真名子―!と叫んでまじウルサイ)
心配だ・・・不幸に慣れ親しんでいる僕は順調だと逆に落ち着かないのだ。
―――合宿が20日も過ぎるとさすがにみんな遊びもだるくなってくる。1回、僕とタイガーは次元環から墓地の屋敷にもどって買い出しを行った。とにかく食料が足りないのだ。もう充電の切れている全員の端末を持ってきて充電しメールの送受信を行っておいた。合宿用の食料はかなりアビルが集めてくれていた。
タイガーセンセの車の助手席に乗り何がいるのかメモ帳を再確認した。
漫画と雑誌とソーラー充電器と映画とアニメと、小説と詩集と整髪料とハンバーガー、化粧品・・・あいつらこき使いやがって。・・・さらにエロ本?なんやねん一体。呆然と買うべきメモ帳を見ているが量が多いな・・・。
手際よく僕とタイガーセンセはコンビニ、スーパー、薬局で大量の必要な物品を買った。しかし量が多すぎる・・・今度からは買い出しは10日に一回にしよう。
最後に本屋と・・・。
センセの車の助手席に座っているが後部座席からトランクまで物で溢れかえっている・・・運転には支障ないのだろうか。
「先生はこのエロ本ってのは買えませんからね。男子高校生にはいるのかしらねぇ?あきらが買ってきてくれるよね?」最近二人きりだとタイガーはあきらと呼び捨てにしてくる。呼び方なんて何でもいいのだが別に。
タイガーセンセのハンドル捌きは慣れたものだ・・・ややゆっくりめの運転だが大量の物品のせいか。
「どんなのがいいのか全然分からないので先生お願いします」
「先生の方が分かるわけないでしょう?」
「いやでもあの・・・18禁って書いてありますよ、霊視するとですね。僕17歳なんですよ」すでに行先の数キロ先の本屋を遠隔視して覗いているのだ。
「そんなの買うつもりなの?どんなのを買うの?あきらは?どんなのが好きなのかな?」
「・・・・・・し、知りませんって。僕の希望じゃないので」どんなのを買うのか説明がいるのだろうか・・・。エロ本て書いたのはダイブツくんとオールバッカ―だな、全く。
思った以上に難易度が高い。
ハンドルを片手で握りながら器用に顔を近づけてくる。
「買ってあげてもいいけれど、あきら」
「はい?なんですかその悪そうな顔は?」
「その本に書いてあることを何か一緒にするんだったら買ってあげましょうか?」
「・・・?・・・?・・・はい?・・・はあ?!」
「・・・冗談よ・・・冗談。適当に雑誌を買えばいいでしょう?」
結局なにやら袋とじのついている雑誌数冊を色んな本に挟んで買ってくれたようだ。
さらに車の隙間に詰め込んで僕たちは車に乗り込んだ。
「さすが先生、雑誌までくわしいんですね」
「まあ一応、大人の女ですからねぇ」
「そうですよね」そういえばそうだったな。大人だった。車運転してるしな。
「大丈夫よ、すぐ大人のオトコにしてあげるからね」
「・・・はい?」
「まあ・・・18歳過ぎたらね」
「・・・ん?はい?」なんのこっちゃ?
しばらく乗用車が進んだところでタイガーセンセは切り出した。
「ところで先生にはいつまで内緒なの?・・・この合宿は・・・普通でないわ」
「・・・ああ、気づいているとは思っていましたけど。話せないことは何もありませんけど話す必要はないと僕は思います」
「なるほどね・・・旨いこと言うわね、私は召喚格闘は一応インストラクターの資格もっていますからね、そうでなくては専任コーチになれないし。もちろん教師4年目で経験豊富ではないけれど・・・」
「今は7人のTMPAの底上げ中です。ある程度上がればそこからはご指導をお願いしたいです、戦闘技術面でのサポートをお願いしたいです」タイガーセンセもZ班の一人だよな。さわりだけ話すか?
まあ仕方ない。
「あの先生。教科書に載っていない方法で、一般には知られていない方法で急速レベルアップをしています、最初はリスクがありますけど今はもう安定しているので安全なレベルアップです、一旦やめるとこのレベルアップは二度とできなくなるので今しかありません。ちなみに先生はできません」
「契約を途中で止めているのよね?きっと。影に一度も召喚獣がもどった形跡がないのよ」さすがに感覚が鋭いな。
「おお、お見事。正解です」
「あと竜の魔力の匂いがプンプンするわ、全員竜族の感じがするわね。・・・以前と魔力の匂いが変わった・・・だとしたら」
「ほとんど正解ですよ。先生。召喚獣の登録を間違うことはままあります、ですから以前からずっと7人とも竜の召喚士であったということです」ほぼバレているな・・・まあそりゃそうか。召喚獣は一度契約すると解除もましてや新しい召喚獣との契約なんて不可能というのが定説だ・・・全員竜族にチェンジすれば・・・。
「・・・まあそういうことにしましょう。・・・言葉を失うほどのトンデモレベルアップだわ。まさしく世界が変わるわね」とは言うもののタイガーセンセの横顔は冷静だな・・・何を考えているんだろう。
それにしても今日は結構話すな・・・タイガーセンセ。
「あなたって不思議なのよ、じんめあきら・・・。幼い子供のようでいて一瞬で老練な賢者になるわ、それからね。・・・わたしは木属性の竜で嗅覚に優れているのはわかっているでしょうけどそれにプラスして女の感もあるでしょうけど・・・」なんだろうタイガーは勿体つけている。つまり週一で一緒に食事するなんて僕らしくない―――深入りしすぎたのだ「一個だけ聞きたいのよ、正直に言ってくれる?・・・・・・あなた・・・死ぬ気でしょ?」
「・・・まさか、そんな気ありませんよ。・・・いやそうですね。もしかしての時、もしもの時の死ぬほどの覚悟は必要でしょう、それを感じたのでしょう。修羅場はくぐっていますから」タイガーセンセはその後珍しく静かになってしまった。あなどれない女だというわけだ。だれかと接したりするからこんなことになるのだ。
深入りしてはいけない―――孤独は安全だ。
ほどなくして屋敷に戻り・・・大量の物品は問題なく合宿場に転移可能だった。
―――それにしても合宿は順調だった。TMPAは順調に伸びている。
驚いたのは黒川有栖の竜“キャストフロール”のTMPAの伸びが尋常じゃない。まあ木属性は早熟で後半伸びなくなるのだが。非常に早い、まさかだが2ヵ月でTMPA2万超えるかもしれない。星崎真名子の“ミイロミューン”とダイブツくんの“ペルシド”は少し遅れている、能力特性を調べるのはレベルアップが終わってからにしないと効率が悪い。というかたまに霊視しているのだが能力が全くわからない。あとの竜は予想通りの伸びだ。
全員の状態を霊視しつつ評価中だが・・・このままいくと冗談抜きでインターハイの校内予選、いいとこ行けるかもしれないな・・・次元環の空はどこかで途切れているはずだが・・・見上げる4000年前の大気は綺麗で澄んでいる。
―――合宿30日目が過ぎたころ、とうとう少し戦い方をレクチャーすることにした。どうせ集中力のない奴等だから一つか二つしか術は教えないつもりだ。
アフロは毒竜“リニアスカー”だが能力が大分分かってきた。攻撃特化型だ、防御力は比較的低い。攻撃は衰退しにくいタイプのため遠距離攻撃タイプだ。とりあえず魔装ロングライフルで練習させておこう。
黒川有栖の木竜“キャストフロール”は身体能力に優れる、五感が鋭く反応が早い。とりあえず右のハイキックが得意とのことだったので攻撃を当てる瞬間に魔力を解放する接近戦の基礎を教えた。まあしかしケンカはしていたみたいだが一度も武道経験はない召喚格闘の実戦経験もなく・・・とても試合では使えないだろう・・・本人は楽しそうではある。
村上君は毒竜“フランソワーズ”だが大変だった。なんとバーサクモードは治らなかったのだ、彼は血を見たり興奮するとバーサクモードとなりTMPAが爆発的に上がる代わりに知能低下を起こし相手に噛みつきもしくは気絶している相手に攻撃し続け全試合を反則負けしている男なのだ。魔装鎧は纏えず獣人化という特殊魔装状態になる。彼のことは後で考えることにした。
青木君は金竜、名前は忘れてしまった。銀河なんとかだったが。彼も大問題だった。もともと彼の能力は自身の石化である。特殊魔装状態で防御力は確かに高いが動けなくなるのだ。防御特化型で飛び道具は覚えれない。竜族になっても金属の塊になるだけで全く変わっていない。とりあえず“加速一現”を覚えてもらって相手に頭突きする瞬間だけ金属の塊になるメタルヘッドバットを覚えてもらった。これ実戦で使えるか?
オールバッカ―の氷竜“レークス”は想像以上だった、バランス型で非常に均整のとれた能力だ、近接、遠距離、範囲攻撃、サードアビリティ、回復までできそうだ。氷竜は後半のびるとするときちんと育てば第三段階レベル90でTMPA7万に達する見込みだ。自分で計測していてなんだがとんでもない個体だ。・・・桔梗とはりあえるんじゃないか・・・潜在能力だけなら。とりあえず近接も遠隔攻撃もできる武器で、斬撃とマジックボールを覚えてもらう。二つくらい覚えれるよね?
星崎真名子の特発種“ミイロミューン”とダイブツくんの同じく“ペルシド”は全く能力が読めないのでとりあえず基礎力アップだ。
―――「やあ集中してるねアフロ。どう?調子は?」兵舎からかなり離れたところでアフロは魔装ロングライフルで遠方の岩を撃っているようだ。
「楽しいのう、もけ。日に日に魔力が増大しているのが分かる。魔装銃は合っているようだのう、魔力増大、スキルアップ。いうことないのう」
「分かっていると思うけど疲れないように、あくまでTMPAアップが優先だからね」
「委細承知」なんやカッコいい言い回しやな。
コイツもなんで練習してるんだ?
「オールバッカー、あの頑張り過ぎないように」どこから持ってきたのかかなり太い木の幹だ。練習用の魔装剣で切り刻んでいる。汗をかいているようだ、マジか?
「フィー、もけちゃんヨ。おれっちバリバリなんだぜ。どんな教師もよ、コーチもいままでおれっちをダメな奴だってレッテル貼ってよ、親もだが誰一人おれっちを見てくれなかったんだぜ」おまえはダメな奴だけどな~「やっと気づいたんだぜ、そんなもん関係ねえってな。自分で自分を認めればいいんだぜ」そうなの?僕はそっと離れた。
村上君も腕立て伏せをしている。
「まああんまり頑張り過ぎないでね、村上君」
「もけさん、すっごく充実しているんです。もけさんのお陰です」バーサクをなんとかしないとどうしようもないんですよ。
次はこっちか・・・青木君と星崎さんがいっしょに練習している。最近仲いいな、こういうのは微笑ましい。
「真名子、俺を見てくれぇえええぇい!硬さだけは誰にも負けないぜぇぇぇぇぇえ、うらぁああああああ!!」
「ああ、もけクン。今日もかわゆいね。調子はどうですか?」
「調子?ふつうだよ、星崎さんはどう?なにか能力の目覚めや気づいたことはないかな?」
「アッフ!!硬い硬い、かた――――いのだ!俺の硬さにきづけぇええぇ」
「回復魔力はすっごくあがってるね」
「それはもともとの能力で、TMPAが上がっているから出力は比例しいるんだろうね」
能力はノーヒントか、ある程度のところで検証しないといけないな。何ができるのか。
「俺を、俺をみてくれぇぇぇぇ!」
「気を使ってくれてありがとうね。」星崎さんは短いブーツを履いている、眉間に皺もなくただのお洒落な女子に見える。くるっとのたうち回っている青木君の方を向いた「遠回しに言うとね、青木君。生理的にキライなの。ガチで」仲良くていいな、言いたいことが言えるのは仲がいい証拠だろう。
霊眼で遠隔視する。
青いジャージのタイガーセンセはもう料理の仕込みを始めている。
ダイブツくんは寝ている、TMPAは上がってるみたいだしまあ様子を見よう。
ん?地下にだれかいる・・・長身だ・・・さっきまでそこにいたダークアリス?・・・あ!やっぱり。王城の地下だ。何している?・・・自分の竜がゴーレムを倒すのを見ているのか、それは目を育てるのには役に立つかもしれない。邪魔はしないでおこう。
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