大晦日

飛鳥 未知琉

⒈大晦日の精霊



今日は大晦日だいみそか

行く年あり、来る年もあり、そんな一日だ。


私は大晦日だいみそかにだけ下界に降りる精霊────


私の役目は、一年に一度。

この大晦日だいみそかにやって来る。

私は、大晦日だいみそかの夜、しっかりと年の移り変わりを済ませるという役目を負っている。


したがって、大晦日だいみそかの日以外には私が下界アンダーワールドに来ることはないのである。


しかし、その仕事はそう簡単なものではないのだ。


まず、私は「おおみそか」という言葉を聞くと消えてしまう。

なので、自分では「だいみそか」と呼ぶことにしている。


また、人間に見つかってしまっても消えてしまう。

つまり、私は生涯孤独しょうがいこどく、独り身。

なんて悲しいんだろうか、まったく。


精霊というと、普通はたくさんの精霊たちが協力し合ってかげながら何かをしているような印象をもつかもしれないが、私には仲間もいなければ同族どうぞくもいない。

まじ孤独死するよ、こんなの。


んでもって、大晦日だいみそかが終われば、精霊使いみたいなおっさんの呪文でまた一年封印されてしまう。

ガチで最悪のお努めだよ。


とにかく、私がする役は人に見つからず、大晦日おおみそかという単語を聞かずに次の年を連れてくるというもの。


でも、私は思ってしまったんだ。



───このまま次の年を連れてこなかったら


そうしたら、私は封印されないんじゃないだろうか。

もう封印されるのは嫌だ。



ならいっそのことやってやる。





彼女は決心した。大晦日だいみそかを終わらせないことを。

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